きょうのコラム「時鐘」 2010年12月23日

 師走も下旬になると1日24時間は同じでもスピード感がまるで違う。せわしげに時が過ぎていく

「1000人が歌う『能登の第九』まだら公演」が、きょう七尾で開かれる。約40年前、この伝承歌謡を録音した富大の中村義朗名誉教授によると、当時は今よりゆっくり歌われていた。手拍子だけだった「まだら」に、楽器が入るようになって変化したという

流行歌やアナウンサーのしゃべりと同じで「まだら」もスピードアップした。生活のリズムが早くなった影響は伝統の合唱民謡にも及んだのである。ところが、歌い手たちは自分の変化に気づかない。新旧二つを比較して初めて変化が分かる

季節によって1カ月が過ぎる時間の感覚が異なるように、人が年を重ねる感覚も、年齢によって違う。中年になると1年が速く過ぎること甚だしく、このスピードで「終着駅」に向かっていると思うとゾッとする

「めでためでたの若松様よ枝も栄える葉も茂る」。年の瀬の大合唱は、残り時間を意識し始めた中高年への応援歌であり、歓喜に満ちた人生を歌うベートーベンに例えられるゆえんでもある。