2010年12月23日4時2分
そんな一色保安官が、海保の端末機から尖閣諸島沖での衝突映像を持ち出したのは10月31日。事件の約2カ月後だった。持ち出した4日後には映像をインターネット上に流出させていた。
「政治的主張や私利私欲に基づくものではありません。ただ広く一人でも多くの人に見てもらい、一人ひとりが考え判断し、そして行動して欲しかっただけです」
動画投稿を上司に告白した後、5管庁舎を6日ぶりに出ていく際、公表したコメントには「確信」のようなものが垣間見えた。商船高専の同級生の間では支援の動きが広がり、弁護士費用をカンパした。
一方で、同僚らには「ご迷惑をおかけします」と謝って回り、「海保を辞めたい」と弱気なそぶりを見せていた。考え抜いた末、12月17日に5管の人事課長に辞職届を手渡した。受理されたのは、警視庁が書類送検し、海保が懲戒処分を発表した22日だった。
海保を去るこの日、5管本部長室で処分内容を申し渡す書類を受け取った一色保安官は、無言のままうつむいていたという。あのコメントだけがすべてなのか。一色保安官はいまだ語ろうとはしない。
一色保安官を知る20代の5管職員は「彼が願った通り、あの映像は多くの人の目に触れた。でも、本人が送検、処分、辞職となったばかりか、他の職員も処分された。今彼がどう思っているのか知りたい」。