2010年11月27日
北朝鮮砲撃事件/中国の影響力行使を求めよ
北朝鮮の韓国・延坪島砲撃事件を受け、国際社会では中国の協力を求める動きが強まっている。しかし事件後の対応を見る限り、中国が責任ある役割を果たしているとは到底言えない。日米韓は中国が北朝鮮に対して影響力を行使するよう強く求めるべきだ。
米韓軍事演習に反対
前原誠司外相はクリントン米国務長官との電話会談で、砲撃事件をめぐって来月ワシントンで日米韓外相会談を行う方針を確認するとともに、中国に協力を呼び掛けていくことで一致した。しかし、これまでのところ中国に北朝鮮を抑える姿勢は見られない。
温家宝首相はメドベージェフ露大統領との会談で「いかなる軍事的挑発行為にも反対する。関係国は最大限の自制を維持すべきだ」と発言したものの、北朝鮮を名指しで非難することは避けた。また、中国政府は黄海で予定されている米韓軍事演習について「中国の排他的経済水域(EEZ)内で、いかなる軍事行動を取ることにも反対する」と表明している。
北朝鮮の砲撃は韓国動乱の休戦協定に違反したものであり、民間人の死者も出ている。決して許すことのできない蛮行だ。国際社会は一致して北朝鮮への制裁を強めなければならない。しかし最も大きな影響力を持っている中国が北朝鮮の挑発行為を黙認すれば、制裁の効果は上がらない。
中国はこれまで一貫して北朝鮮に甘い姿勢を取ってきた。3月の韓国哨戒艦撃沈事件でも、北朝鮮非難を避けた。北朝鮮の独裁的な世襲体制も支持し、経済支援を行っている。中国軍内部では戦略的観点から北朝鮮擁護論が強いとされる。しかし北朝鮮に甘い対応をし続ければ、中国に対する国際社会の批判が高まろう。
中国は尖閣諸島沖の中国漁船領海侵犯事件をめぐっても、レアアース(希土類)の輸出停止や日本企業の社員拘束など国際常識に反する姿勢で批判を浴びた。今月も尖閣諸島沖の日本の接続水域を中国の漁業監視船が航行している。地域の安定を損なうような身勝手な活動は許されない。
さらに中国の民主活動家、劉暁波氏のノーベル平和賞授賞式に参加しないよう各国に呼び掛けたのも問題だ。中国は北朝鮮の砲撃事件に対して国際常識を順守し大国の責任を果たす必要がある。
北朝鮮は中国が日米韓に同調するのを恐れ、中朝友好のアピールに躍起になっている。金正日総書記はこのほど、後継者の3男、金正恩・朝鮮労働党中央軍事委副委員長らとともに中国の無償援助で建設されたガラス工場を視察した。金総書記は「朝中友好の象徴である工場での増産は両国の協力関係の活力を誇示する上でも重要だ」と語っている。
対北制裁に仕向けよ
北朝鮮は核問題でも国際社会を裏切り続けている。北朝鮮情勢は日本の安全保障に直結しており、これ以上の挑発行為を許すわけにはいかない。日本は米韓両国と緊密に連携し、中国を対北制裁に仕向けるよう全力を挙げるべきだ。