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【神奈川】日米安保50年の断層<上>問われる米軍の抑止力2010年12月2日
朝鮮半島西側の黄海での米韓合同軍事演習が終了した一日。米海軍横須賀基地から参加した原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)の艦載機の拠点である米海軍厚木基地(大和市、綾瀬市)では、米海軍の移駐六十周年と、日米安保条約改定五十周年を祝う記念式典が行われた。 式典に先立つシンポジウムでは、日米の研究者や外交・防衛関係者らが「東アジア情勢を見据えた日米同盟」をテーマに討論。日本の研究者は、米韓合同軍事演習の発端となった北朝鮮による韓国・延坪島(ヨンピョンド)砲撃を踏まえ「私たちの住む地域は、武力紛争につながりかねない問題が残る非常に危険な地域だ」と強調した。 元自衛隊幹部のパネリストは、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件に関連し、「中国の恐ろしい点は、すきを見て橋頭堡(ほ)をつくり、実効支配をする巧妙さだ。実行のためには、武力行使をいとわない。尖閣諸島が、この戦略の目標になっている」と指摘した。 米軍はこれまで、中国や北朝鮮の脅威を強調し、日本周辺の安定には、米軍の抑止力が必要だと訴えてきた。 尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件が起きた三日後の九月十日、横須賀基地での第七艦隊司令官交代式で、退任あいさつをしたジョン・バード前司令官は「(中国による)『接近阻止戦略』と、過剰なまでの領土権の主張の中で、アメリカの地域安定への影響力は、決定的に重要な意味を持つ」と強調した。 中国に対する米軍の強い警戒感について、防衛大学校(横須賀市)教授も務めた元外務省国際情報局長の孫崎享さんは、背景をこう分析する。 「中国を味方にしようとする動きと、対決しようとする動き。米国には常に、この二つの流れがある。尖閣諸島をめぐる問題では、対決姿勢を持つグループが、活発に動いているのではないか」 一方、基地の街ではこうした対決姿勢に、反発する動きもある。米韓合同軍事演習が始まった先月二十八日、横須賀基地に隣接する公園での抗議集会で、メンバーの一人は、空母の抑止力に疑問を投げかける声明文を読み上げた。 「圧倒的な兵力を動員して、北朝鮮を威嚇するやり方は、決して成功しない。米韓両国は七月にも合同演習を行ったが、北朝鮮は態度を変えなかった」 ◇ 日米安保条約改定五十周年となる今年は、政府による日米核密約の認定や、沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題など、「対等な日米関係」を意識した動きが相次いだ。一方、東アジアの緊張に伴い、日本周辺の安全保障に関する議論も活発化した。安保をめぐる節目と転機が重なったこの一年。基地の街に広がった波紋を振り返る。 ◇今年の東アジアをめぐる動き3月26日 韓国海軍の哨戒艦「天安」が黄海で沈没。死者・行方不明者46人 4月8日 中国海軍の艦載ヘリコプターが、東シナ海で海自護衛艦に接近 5月20日 韓国調査団が哨戒艦沈没の原因を「北朝鮮製魚雷による水中爆発」と発表 7月25日 日本海で米韓合同軍事演習。空母GW参加 9月7日 尖閣諸島周辺で海保巡視船と中国漁船が衝突。翌日、海保が中国船長を逮捕 23日 クリントン米国務長官が、尖閣諸島は日米安保条約の適用対象だと明言 11月1日 ロシアのメドベージェフ大統領が国後島訪問 23日 北朝鮮が韓国・延坪島を砲撃。民間人含む死者4人 28日 黄海で米韓合同軍事演習。空母GW参加
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