« 金融庁による日本ファースト証券の破産申立 | トップページ | 日本銀行情報流出事件と北海道警捜査資料流出事件訴訟判決 »

2008年3月23日 (日)

AKB48の企画中止と独占禁止法

 一般紙などには報道されてないので気づかなかったのですが、独占禁止法がらみで面白いのを見つけました。ひさしぶりの芸能ネタでもあります。
 昨年末の紅白にも出た人気女性アイドルグループの「AKB48」に関するものです。ファンにとっては古いニュースかも知れませんけども。

 AKB48のシングルCD「桜の花びらたち2008」(2月27日発売)について、公式サイト上で2月25日に、秋葉原「AKB48劇場」での先行販売分(2月26日から)に、特別プレゼントとしてメンバー全員分のソロポスター44種類がもらえ、全種類集めると特別のイベント「春の祭典」に招待されるという特典が発表されました。
 これは、CD1枚購入でポスターが1枚付くというもので、しかもポスターの種類は指定できずランダムで渡されるので、全種類集めるためには相当数のCDを買う必要があったものです(最低でも44枚必要ですが、確率的にはすごい枚数を買わなきゃ独力では無理でしょうね)。

 いくつかのネット上の報道を見ると、この企画については、ネット上でもファンから批判が相次き、また、ポスターがネットオークションに多数出品されるなどの騒動にもなったようです。

 そして、CD発売の翌日の2月28日には、発売元のデフスターレコーズ(ソニー・ミュージックエンタテインメント系列)は、サイト上で、「AKB48劇場販売限定特典ポスター・コンプリート購入者ほか対象『春の祭典』ご招待施策中止のご案内」を発表するに至りました。
 そこでは、上記の企画が、ファンの過熱を招いたことを謝罪したうえで、「当企画の『桜の花びらたち2008』発売に伴う『春の祭典』ご招待施策が『独占禁止法』上の『不公正な取引』に抵触する恐れがありましたので、AKB48『春の祭典』の実施を含め、施策を中止とさせていただきます。」として、企画の取りやめを発表しています。また、AKB48劇場でCD複数枚を購入した人には希望により返品等の処置をとる(3月末日まで)、とのことです(詳しくは上記発表内容参照)。

 この企画中止発表の前日のJ-CASTニュースは、この企画について、景品表示法上の「不当景品」に該当するか否かの問題を取り上げ、公正取引委員会や消費者法に詳しい村千鶴子弁護士の見解などを紹介して、景品表示法違反を法的に問うのは難しいのではないか、としていました。

 しかし、上記の企画中止発表によれば、景品表示法ではなく、独占禁止法で禁止されている不公正な取引方法に該当する恐れがあるとしています。景品表示法独占禁止法不公正な取引方法規制の特例法ではありますが、発表内容からすれば、親玉の独占禁止法自体の違反の可能性も検討されたようですね(ひょっとすると、公取委から何らかの示唆があったのかもしれません)。
 「不公正な取引方法」の一般指定のどれかに該当しそうだということになるのですが、おそらく「不当な利益による顧客誘引」(同9項)なのでしょうね(この行為の特別な規制が景品表示法の不当景品規制)。実際の宣伝の仕方によっては「欺まん的顧客誘引」(一般指定8項)も検討できるかな(こちらの行為の特別な規制が景品表示法の不当表示規制)。

 この企画中止によって、ネットオークションでのポスター落札でトラブルが生じないか、というのも心配ですね。

〈参考〉
不公正な取引方法「一般指定」(公正取引委員会告示)抜粋
8 ぎまん的顧客誘引
 自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。
9 不当な利益による顧客誘引
 正常な商慣習に照らして不当な利益をもつて、競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること。

|
|

« 金融庁による日本ファースト証券の破産申立 | トップページ | 日本銀行情報流出事件と北海道警捜査資料流出事件訴訟判決 »

法律」カテゴリの記事

芸能・アイドル」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/183277/40617275

この記事へのトラックバック一覧です: AKB48の企画中止と独占禁止法:

» 独占禁止法に関するサイト [独占禁止法NET情報局]
独占禁止法に関する情報サイトです。 [続きを読む]

受信: 2008年4月16日 (水) 10時17分

« 金融庁による日本ファースト証券の破産申立 | トップページ | 日本銀行情報流出事件と北海道警捜査資料流出事件訴訟判決 »