鹿児島市で夫婦が殺害された事件の裁判員裁判で、死刑が求刑された被告に無罪が言い渡されたことについて、鹿児島地方検察庁は判決を不服として控訴しました。
この事件は、去年6月、鹿児島市の住宅で藏ノ下忠さん(91)と妻のハツエさん(87)がスコップで頭などを殴られ殺害されたものです。鹿児島市の白浜政広さん(71)が強盗殺人などの罪に問われましたが、鹿児島地方裁判所は、今月10日、裁判員裁判では初めて、死刑が求刑された事件で無罪を言い渡しました。判決は「十分な捜査が行われたか疑問で、被告が犯人とは認められない」と指摘し、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則を厳格に適用しました。判決について、鹿児島地方検察庁は高等検察庁などと協議した結果、「事実の認定に誤りがある」として、22日、福岡高等裁判所宮崎支部に控訴しました。これによって、1審の裁判員たちの判断の是非が、裁判官だけで構成する2審で争われることになります。鹿児島地方検察庁の江藤靖典次席検事は「裁判員裁判で示された、国民の感覚をできるかぎり尊重するのが基本方針だが、判決には証拠に照らして見過ごせない誤りがある」と話しています。検察が控訴したことについて、白浜さんは自宅の前で取材に応じ、「控訴はないと思っていたが想定の範囲内です。控訴審で新しい証拠などは出てこないと思う」と話しました。