2010年10月24日 20時1分
北朝鮮による拉致被害者の有本恵子さん(行方不明時23歳)の両親が、ジャーナリストの田原総一朗氏(76)の「外務省も生きていないことは分かっている」とのテレビ番組での発言で精神的苦痛を受けたとして1000万円の慰謝料を求めた訴訟で、田原氏が外務省幹部への取材を録音したテープの提出を神戸地裁(長井浩一裁判長)が命じる決定をしていたことが分かった。田原氏側は「取材源が不利益を受ける」として近く大阪高裁に即時抗告する。
長井裁判長は18日付の決定で、田原氏側が発言の根拠として08年11月11日の外務省幹部への取材テープの一部を書面化して提出したことから「秘密保持の利益を放棄した」と判断。その上で「原告側にテープの内容が引用と異ならないかどうか検討と反論の機会を与えることが裁判の公平さを担保することになる」とした。
田原氏は毎日新聞の取材に「テープに録音された声で誰がしゃべったかすぐに分かってしまう。裁判所が取材源の秘匿を認めないのはとんでもない話。ジャーナリストに対する弾圧だ」と話した。
訴状によると、田原氏は昨年4月の討論番組で、有本さんと横田めぐみさん(同13歳)について、「外務省も生きていないことは分かっている」と発言。有本さんの父明弘さん(82)と母嘉代子さん(84)=神戸市=が同年7月、あたかも外務省が恵子さんの死亡を把握し、外務省高官から伝え聞いたかのような虚偽を伝えたなどとして提訴し、テープの提出を申し立てていた。【重石岳史】