2010年10月24日 10時18分 更新:10月24日 10時51分
ごみを処理するミミズ、それを放置する人間--。生物多様性条約第10回締約国会議(COP10=名古屋会議)で、廃棄された書類や生ごみをミミズを使って土に戻すデモンストレーションが行われている。その会場では、COP10支援実行委員会の指導でごみの分別収集が徹底されているが、分別の複雑さが裏目に出て、夜間に大量のごみが放置されている実情がある。【稲垣衆史】
「ミミズ・プロジェクト」で生き物の「リサイクルの力」をアピールしているのは、日本のNGO(非政府組織)生物多様性条約市民ネットワークの水田部会。名古屋国際会議場近くにある関連イベントの環境省ブースなど7カ所に、大量のシマミミズが入った木製の箱を設置している。ミミズは弁当の食べ残しや細かくした書類を食べる。消化の過程で増える微生物がごみを分解、発酵させるため、ふんは土に再生される。箱に入れると7~10日で土になるといい、その土は来場者に配布されている。
同部会の構成団体「NPO法人田んぼ」の岩渕成紀理事長は「食べ残しやごみを出さないことが一番大切」とした上で、「目に見える形で生物多様性を実感してほしい。名古屋から発信したミミズのごみ処理が世界で一般的になっていけばいい」と話している。
ほとんどの参加者が名古屋国際会議場を去った午後9時過ぎ。中庭のテーブルの上や地面には紙コップや食べ残し、書類などが散乱している。帰り際にごみをテーブルに置いていく参加者もいる。
COP10支援実行委は開催地・名古屋市にならい、11種類のごみ分別を実施している。会場内の3カ所に可燃、不燃、ペットボトル、OA用紙など11種類のごみ箱を置く。昼間は場内アナウンスやパンフレット配布のほか、市民ボランティアを配置して分別方法を周知している。しかし夜間になると、ごみが大量に残され、スタッフや清掃員が翌朝までに片付けている。
会議に参加するカナダ人男性は「ごみを放置するのは恥ずかしいこと」と話す一方で、「ここの分別は米国や欧州と比べて複雑すぎる」とぼやく。
閣僚級会合が始まる27日からは参加者の数も増える。実行委は「習慣や文化の違いはあっても、環境保全を議論している人たちだから理解できると思う。身の回りからエコ意識を持って」と訴えている。