2010年12月22日13時8分
公開された外交文書。沖縄返還に伴い日本が肩代わりする米軍施設の移転費や改良費など6500万ドルについて、米側に公表しないよう働きかけている
1972年の沖縄返還で米国側が本来払うとされた費用の一部を日本が肩代わりする「密約」を裏付ける日本側の外交文書が、22日の外交文書公開で明らかになった。一貫して存在を否定し続けてきた外務省の主張を覆す内容になっている。
公開されたのは、71年10月22日、外務省北米1課の担当者が、米国大使館員に申し入れた内容を報告した「極秘」扱いの文書。当時必要とされた米軍基地の施設改良費6500万ドル(当時のレートで234億円)について、担当者は「(日本が肩代わりする)65という数字が財務当局間の交渉で合意されている趣は承知しているが、我が方としては320(沖縄返還協定で決めた3億2千万ドル)以外に米国に支払う額はないと国会に説明する」と説明。「65という数字が存在するわけではないと説明することにしているので、米側においても言及は避けてほしい」と要請した。
この文書には、事務次官や官房長、アメリカ局長ら同省幹部も、目を通したことを示すサインを残している。
これに先立つ同年6月9日、パリの米国大使館内で開かれた日米外相会談でも、「65」について話し合われていた。当時の米ロジャーズ国務長官が愛知揆一外相に対し、「65の使途につき日本政府のリベラルな解釈を期待する」と発言。これに対し、愛知氏も、「できる限りのリベラルな解釈をアシュア(請け合う)する」と述べていた。
日米間で返還協定が決めた3億2千万ドルの負担以外の費用の肩代わりを、日米両政府が閣僚レベルですりあわせていたことがうかがわれる。