大詰めを迎えた11年度予算案の編成作業で、玄葉光一郎国家戦略担当相が府省間の調整役として存在感を増しつつある。閣内調整を担うはずの仙谷由人官房長官は、参院で問責決議を受けた影響もあってか影が薄く、法人税率引き下げなど難題を仕切ったのは、民主党政調会長を兼務する玄葉氏だった。菅直人首相が来年の通常国会前に内閣改造に踏み切るかが注目される中、政府・民主党内では「ポスト仙谷」として玄葉氏の名もささやかれ始めた。【小山由宇、大場伸也】
「私自身が多くの課題の調整役を担うという想像はしていなかったが、調整するよう指示が来たので、その範囲で精いっぱい調整させていただいた」。玄葉氏は21日の記者会見で、調整役の重責を担ったことに、謙遜しつつ自負を見せた。問責決議を受けた仙谷氏が表立って動きにくく、代わりに玄葉氏が調整役を務めた面は否定できない。
予算編成で目立ったのが、財源確保を求める野田佳彦財務相を玄葉氏が押し切る場面だ。法人税率の引き下げでは玄葉氏が5%、野田氏が3%を主張したが、最後は首相裁定に持ち込み、5%で決着させた。子ども手当を3歳未満に7000円上積みする方針を巡っても、圧縮や所得制限を模索する財務省の動きを抑え込んだ。
玄葉氏の調整力の源泉は、閣僚と党幹部の兼務に加え、党政策調査会幹部会のメンバー6人中3人が小沢氏に近く、小沢氏側に目配りが利く点にある。小沢系議員を中心に反対論が噴出した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を巡る党内調整を「協議開始」の方針でまとめ菅首相からの評価を高めたようだ。
連日の党政調の幹部会で弱気になった玄葉氏が「官房長官に任せようか」と漏らした時、小沢系の山口壮政調副会長らが「自信を持ってください。仙谷さんが今やってもまとまらない」と元気づける場面もあった。
玄葉氏らの後見人を自任する仙谷氏も、その活躍に目を細める。21日の記者会見では「獅子奮迅、党と各省庁と財務相との総合調整を適切に行っている」と持ち上げた。
毎日新聞 2010年12月21日 21時45分(最終更新 12月22日 11時02分)