1972年の沖縄返還を前に、日本は核兵器の撤去費用などとして、あわせて3億2000万ドルをアメリカに支払う協定を結びましたが、これ以外に6500万ドルの支払いを約束し、アメリカ側に公表しないよう働きかけていたことが、22日に公開された外交文書で分かり、新たな密約とみられる問題として議論を呼びそうです。
1972年の沖縄返還を前に日米両政府が結んだ沖縄返還協定では、日本側が核兵器の撤去費用などのためにあわせて3億2000万ドルを支払うことで合意し、国会でも承認されました。しかし、22日に公開された1971年10月に当時の北米1課の担当者が複数の外務省幹部に宛てた極秘の内部文書の中で「6500万ドルを支払うことで財務当局間で合意されている」と記されています。そのうえで「わが方は、3億2000万ドル以外にアメリカに支払う金額はないと国会に説明することにしており、アメリカ側には6500万ドルという数字に言及することは避けてほしいと述べておいた」として、アメリカ側に公表しないよう働きかけていたことが分かりました。この問題を巡っては、当時の社会党などが、国会で普天間基地や岩国基地の改修費用など沖縄返還とは関係のない目的に支出されたのではないかと追及し、密約の可能性を指摘していました。しかし外務省が設置した密約を巡る有識者委員会がことし3月にまとめた調査では、今回の事案は対象となっておらず、外交文書でその存在が裏付けられたことで、新たな密約とみられる問題として議論を呼びそうです。これについて、外務省の有識者委員会の委員を務めた名古屋大学の春名幹男特任教授は「当時、『カネで沖縄を買った』と批判されるなかで、日本政府として、国民の目に触れない形でアメリカ側に支払いをしていたケースが多かったことを示しているものだ。具体的な支出の経緯など、今後、検証する必要があると思う」と話しています。また仙谷官房長官は、記者会見で「公開する資料については、政府が1つ1つコメントしないと決めている。歴史的な事実に対する評価は、皆さんにお任せしたい」と述べました。