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靖国合祀訴訟:国からの名簿提供は政教分離違反 大阪高裁

 第二次世界大戦の戦没者の遺族9人が「遺族の同意なくまつられ、精神的苦痛を受けた」として、靖国神社への合祀(ごうし)取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決が21日、大阪高裁であった。前坂光雄裁判長は合祀による法的利益の侵害を認めなかった1審・大阪地裁判決(09年2月)を支持し、原告側の控訴を棄却した。一方で国による戦没者氏名などの靖国神社への情報提供は「合祀という宗教行為を援助、助長していた」として、憲法が定める政教分離に違反していると初めて認めた。原告側は上告する方針。

 前坂裁判長は自衛官の遺族が護国神社への合祀拒否を求めて敗訴した訴訟の最高裁判決(88年)を根拠に「合祀は遺族に宗教儀式への参加を強制するものではなく、法的利益の侵害はない。靖国神社にも宗教活動の自由が保障されている」と判断し、合祀の取り消しを認めなかった。

 ただ、国は遺族への合祀通知に協力していた▽厚生省(当時)が1956~65年ごろ、靖国神社と緊密に打ち合わせていた--などとして「合祀は靖国神社の自律的宗教行為だが、円滑な実行のため国の協力が大きかったのは明らかだ」と言及し、国による宗教行為への関与を認定した。「名簿の提供は合祀の支援が目的で、憲法の定める政教分離原則に反する」としていた原告側の主張を一定程度認めた。

 被告は靖国神社(東京都)と国。原告9人の父や兄弟らは旧日本軍の軍人・軍属として戦死・病死し、いずれも靖国神社に合祀されている。「肉親をしのぶ権利を侵害された」などとして、合祀の基になる霊璽(れいじ)簿などから肉親の氏名を削除するよう求めていた。【日野行介】

毎日新聞 2010年12月21日 20時21分

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