2010年12月18日11時39分
本格時代劇の当たり年でもあった。中でも画期的な悪の描写で“新しい波”の一翼を担ったのが「十三人の刺客」だ。三池崇史監督は悪を体現する敵役の描写に注力した。「何をしても面白くない。生きている実感がわかない」との理由で悪を行使する男。現代を象徴する存在だった。
瀬々敬久監督「ヘヴンズストーリー」は悪とかかわった20人の人生が語られる4時間半の大作。北野武監督「アウトレイジ」は登場人物全員が悪人。日常の小さな悪を掘り出して一つの物語に紡いだ「川の底からこんにちは」の石井裕也監督は、いずれ“新しい波”の先頭走者になるだろう。
今年の物故者。小林桂樹、池部良、池内淳子、佐藤慶、木村威夫、今敏……。フランスでは半世紀前にヌーベルバーグ(新しい波)を起こした監督のエリック・ロメールとクロード・シャブロルが死去。その10年後、アメリカン・ニューシネマという新潮流を生んだ「イージー・ライダー」のデニス・ホッパーと「俺たちに明日はない」のアーサー・ペンも相次いで鬼籍に入った。(石飛徳樹)
■私の3点 選者50音順(敬称略)
佐藤忠男(映画評論家)
▲冬の小鳥(ウニー・ルコント監督、韓・仏)
▲悪人(李相日監督)
▲レオニー(松井久子監督、日・米)
秦早穂子(評論家)
▲息もできない(ヤン・イクチュン監督、韓)
▲白いリボン(ミヒャエル・ハネケ監督、独ほか)
▲ヘヴンズストーリー(瀬々敬久監督)
山根貞男(映画評論家)
▲アウトレイジ(北野武監督)
▲ユキとニナ(諏訪敦彦、イポリット・ジラルド監督、仏・日)
▲ケンタとジュンとカヨちゃんの国(大森立嗣監督)