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木より落ちた猿

2010年12月22日0時1分

 今年の主要先進国は例外なく政治的統治能力の弱体化、不況下の財政再建という二律背反の経済運営、主要国中心の既存秩序に反発する新興国群の挑戦という三重苦のなかで仕切り直しを迫られた。

 日米両国は参院選、中間選挙でいずれも与党民主党が敗北し、英国も総選挙で保守党がカムバックしたが過半数を逸し、自由民主党との連立を余儀なくされた。ドイツでもメルケル政権はドイツ州議会選で大敗し、連邦上院で過半数割れとなり、日本と同様にねじれ議会に追い込まれ、仏サルコジ政権も支持率の急落に悩んでいる。

 頼みを失った「木より落ちた猿」のように、先進国不本意の理由はイデオロギー的規範が見つからないことにあるように思える。

 米国は金融資本やゼネラル・モーターズの救済に巨額の税金をつぎ込み、社会主義的に左傾したかに見えるが、これに反発して「小さな政府」や自由経済の堅持を主張する市民運動の「ティーパーティー(茶会)」が中間選挙に勝ったのは右傾化とも映る。キャメロン英政権も財政再建の荒療治に乗り出したが、授業料値上げ反対の学生デモが過熱、往年のサッチャー首相のような構造改革ができる状況にない。メルケル政権発足時の保革大連立も奏功せず、すでに社会民主主義を経験済みの欧州各国は「次の一手」が見つからない。

 各国とも財政再建を訴えても国民は容易に動かない。日本国民も米国民も勤勉と努力はいつか報いられるという夢があるうちは増税なども我慢できたが、今はバブル崩壊、アメリカンドリーム破綻(はたん)のつけを払うための負担増はまっぴらと拒絶反応が強い。先進国には来る年もまだ出口が見えない。(昴)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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