きょうのコラム「時鐘」 2010年12月22日

 高岡古城公園の鳥インフル問題でイメージが変わりそうだが、城と白鳥は日本的な美しい光景を描き出す名コンビだった

金沢城の「白鳥堀」は、白鳥がいる堀だったからその名がついたとも言うが、3代藩主利常夫人の珠姫が江戸城の「白鳥堀」をしのんだとの説が有力だ。それほど各地の城の堀には多くの白鳥が飛んできたのである

堀に浮かぶのは、白鳥でなく水鳥なら何でもよかった。敵の忍びの者が堀を渡って侵入しようとすれば鳥が騒いで飛び立つからである。水鳥は城の「危険感知器」だった。西洋でも、鉱山の有毒ガス探知に小鳥が利用された。昔から、鳥は人間に危険を知らせる役割を担っていた

人間が気づかないわずかな環境の変化にいち早く反応するからである。鳥インフル問題は地球環境の異変を知らせているようだ。人間に感染しないとされるから冷静に対処したい。同時に、人間と鳥の長い歴史を考える機会にしたいものだ

自由に飛べる羽を持ちながら、鳥は人間の周りにつかず離れずにいる。自然と人間のほどよい距離を教えてくれるようで、いっそう健気に見えてくる。