事件・事故
前社長「ATSに消極」 尼崎JR脱線初公判
取材陣が待つ中、タクシーに乗って神戸地裁を出る山崎正夫被告=21日夜、神戸市中央区(撮影・山崎 竜) |
尼崎JR脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本前社長、山崎正夫被告(67)の21日の初公判で、被告が安全対策室長だった際、神戸支社が自動列車停止装置(ATS)の設置を上申したのに、「ほかからも要求が出る」と言い、部下に会議で消極的な発言をさせた、と検察側が主張した。検察側はほかの例も挙げ、「被告は、路線単位で整備する社内方針に固執していた」と指摘している。
弁護側は「危険性を認識していながら、あえて放置することはあり得ない」と反論している。
検察側の冒頭陳述によると、現場カーブ付け替え3年前の1993年、神戸支社が新たに建設した貨物基地にATSを設置したいと安全対策室に上申。山崎被告は、当時の同室次長に対し、「ATSの整備順序と異なる支社の要求を受けると、ほかの支社からも要求が出てくる事態になりかねない」と主張するよう指示したという。
さらに97年5月の岡山新幹線運転所での脱線事故や、同年8月の東海道線沼津駅付近で起きた追突事故の対応をめぐっても、ATS設置の提案を「コストが掛かる」などと消極的な発言をしていた、とも述べた。
冒頭陳述で検察側は、(1)JR西を含む各社がカーブにATSを設置していた(2)カーブ付け替え工事直前に発生したJR函館線の脱線事故が「ATSがあれば防げた例」として会議で報告された(3)現場カーブは同社のATS設置基準を満たしていた‐として「予見可能性があった」と主張した。
それに対し弁護側は、(1)当時カーブへのATS設置はほとんど行われていなかった(2)会議資料で函館線事故の記載は1行余り(3)ATS設置基準は路線ごとで個別には設置しなかった‐と反論した。
初公判は午後も続行し、双方の冒頭陳述や検察側の証拠の内容説明があり、午後6時ごろ閉廷した。その後、神戸地検は被害者説明会を開き、遺族ら28人が参加。今後も公判のたびに行う。
第2回公判は24日午後1時からで、検察側と弁護側双方の証拠の説明が行われる予定。
(2010/12/22 00:30)
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