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2010.12.20(Mon)

「新しい戦前」の始まりか 

「こち亀の両さん」普通の生活しか送れない? 漫画の性描写規制に漫画家や出版社大反対
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=1219&f=business_1219_016.shtml

 東京都が、性描写を規制する青少年健全育成条例改正案が可決した。漫画家や出版社など反対派は多く、経済面にも影響を与えそうだ。

  東京都議会総務委員会は13日、子どもの登場人物による露骨な性行為が描かれた漫画などの販売・レンタルを規制する青少年健全育成条例改正案を可決。都議会の民主、自民、公明の3会派が賛成した。改正案では「刑罰法規に触れる性交等」などを「不当に賛美・誇張」して描いたものを規制対象とし、書店に対して18歳未満への販売を禁止し、店頭での区分陳列を義務づける。

  これまで賛成派、反対派ともに活発な動きを見せていた。賛成派の都小学校PTA協議会ら5団体は12月3日、石原慎太郎都知事に要望書を提出。都小学校PTA協議会の新谷珠恵会長は「子どもたちが健やかに育てるように、社会作りにお力添えをいただきたい」と述べ、児童が性的対象になることが、野放しの状態となっている現状に、早急な改善を訴えた。

  一方、反対派としては、11月29日には漫画家のちばてつや氏、秋本治氏や出版社の幹部などが条例に反対する声明を発表。ちば氏は「この条例によりアニメや漫画を志す若者たちが萎縮するのではないか」「漫画やアニメーションの文化がしぼんでしまうことをすごく心配している」と語っていた。秋本氏は「自由度があるのが漫画の世界。それを規制すれば、『こち亀』の両さんは単なる普通の生活を送らざるを得ない」との意見を述べていた。

  12月3日には、改正案に反対する弁護士や日本ペンクラブ、大学教授らが、規制範囲が拡大しているとして会見を行った。規制の対象となる行為をキャラクターの年齢制限ではなく、「刑罰法規に触れる性行為」に変更したことで規制範囲が広がり明らかに表現規制だと主張している。

  12月10日には、角川書店のほか講談社、集英社、小学館など主要な漫画雑誌や単行本を発行する出版社でつくる「コミック10社会」も同改正案に抗議の意思を示すため、「東京国際アニメフェア」への出展辞退を表明した。このイベントは石原都知事が実行委員長を務め、2011年3月下旬に開催予定とされていたが、現時点では開催を危ぶむ声も上がっているという。

  インターネット上でもさまざまな声が上がっており、「漫画やアニメが害悪で、小説なら害悪じゃないと言いたいのか?」といった指摘や「もうこれはオタク文化だとかそういうレベルじゃない。この法案を通したら、他のものまで一気に失う」といった反対派の意見が多く見られた。

  賛成する声としては「理性が未熟な子どもが、過激な物に触れてはいけないとも思う。ゾーニングの徹底なら賛成」「漫画は好きだが、今の惨状を認めたら、せめてブース分けぐらいの努力は必要。海外で変態が日本文化として紹介されているのは異常」といった意見もある。

  一方で「日本の漫画やアニメ文化は、10兆円規模ともいわれており、今や日本経済を支える産業の一つとなっている。それを自ら縮小させようとするのだから滑稽だ」という経済への影響を懸念する声も見られる。

  東京都には、出版社や印刷会社が集中しており、漫画やアニメなどサブカルチャーの聖地ともいえる秋葉原もある。またビッグサイトでは、同人誌の即売会も開催されている。今回の規制は、市場の縮小傾向が続いている出版業界にとって、経済的な打撃も大きそうだ。


ところで、問題の条例を立案した東京都青少年・治安対策本部長の倉田潤さんというお方は、とんでもないお方らしい。

なんてったって、冤罪事件で下がった株を、この条例で上げようっていうのだから。

以下のリンクに、その辺の事情が書いてある。

http://www.asyura2.com/10/senkyo82/msg/503.html

リンク先で言及されている志布志事件というのは、こういう事件である。

志布志事件
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%97%E5%B8%83%E5%BF%97%E4%BA%8B%E4%BB%B6

要するに、冤罪事件で「左遷」になった警察官僚が、出世街道に復帰するために冒頭記事の条例で点数を稼ごうと思ったようだ。

エロ漫画やエロアニメが取り締まれるようになれば、警察の検挙件数が増えて予算が獲得しやすくなる。そして、アングラが表立って発表できなくなれば、当然地下に潜る(規制=人間の欲望が減るわけではない)ことになり、そこでは警察と昵懇のヤクザが法外な値段でシノギを得ることになる。そんな感じだろう。

しかし、私利私欲を、「公共のため」という嘘で塗り固める。エリートにはそれが許されると思っている節がある所など、この倉田という人物は、まさに我が国のエリート官僚という感じがする。

戦前にも、そうやって国家を私し、国民を不幸のどん底に叩き込んだ「エリート」がいた。革新官僚である。

革新官僚とは
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%A9%E6%96%B0%E5%AE%98%E5%83%9A

革新官僚については、●前のgooブログでも記事を書いた。昔の記事はネット右翼そのものという感じのものが多く、はずかしい限りだが、これについては訂正の余地を感じない。

そして、問題はこういう条例を支持している側の人間にもある。

この手の「健全育成」条例と、そのような決まりを用いて統制国家を作ろうとする官僚を支援する連中がいる。PTA協議会などがそうだが、そういうところに集まる人間は、奇妙な純潔主義に染まっているところがある。

たとえば、政治家はカネに汚いとか、ネットは犯罪の温床だいうことをそういう人たちはよく言い、一番大事なのは清廉で健全であることだと唱える。

しかし、面白いもので、そういう連中は、政治を実際に動かしている官僚がいるとか、ネットを使って企業がサービスや宣伝を行っている事実については全く目を向けない。

そして、こういう連中こそが、戦前に「政治家は腐ってる、軍人さんは陛下の息子だから高潔なひとたちだ」とか思って、中国侵略や対米英戦争を熱狂的に支持した連中なのである。

たとえば、以下のリンクにあるような婦人団体など良い例である。

国防婦人会
http://myp2004.blog66.fc2.com/blog-entry-22.html

恐ろしいことは、国防婦人会に参加していた人たちの多くが、善意で若者を戦場に送り出していたことだ。これは、エロ本狩りに血道を上げる現代のPTAにも言えることである。

そして、そういう活動をしていた人間は、戦争が終わったら、手のひらを返すように平和が一番とか、国家が悪い天皇が悪いとか言い始めたタイプである。●戦時中、時局婦人会に加わり、戦争遂行に協力した市川房枝など、まさしくそういう生き方をしてきた人間だ。

「他人が不快に思う娯楽など要らない。そんなのを楽しみたい人間はクズだ」
「性欲を解消したいならパートナーを見つければいい。できないのは努力が足りないから」
「サブカルチャーなんて不健全なものはこの世から消えてなくなれ」
「私たちが望んでいるのは、心が清らかで理性的な人たちだけが集うきれいな社会。くだらないゴミどもは消えろ」

最後のなんて、まるで『デスノート』の主人公みたいな考えだが、PTAにいる目のつり上がった連中の考え方からはそう離れていないだろう。

そして、その純潔主義は、ソ連に範を求め、完璧な国家統制経済を夢見た革新官僚に相通ずるものがある(そして、戦中から戦後にかけて、その一部が実現した)。

なにより、この件で一番問題があるのは、表現の自由を一番守るべき立場にあるマスコミである。

マスコミ各社は、この件に関してはやけに「客観的」だ。小沢一郎に対する「説明責任を果たせ」「国会で弁明しろ」の継続的かつ熱烈な大合唱と比べてみるといい。「表現の自由を守れ」という社説を掲げる新聞もなければ、反対キャンペーンをやるテレビもない。

石原がナンキンだとかヤスクニだとか、はっきり言って庶民にとってどうでもいいことに言及すると、ムキになってそれを叩くのとえらい違いだ。

おまえら、アツくなるのは、小沢の政治とカネの問題じゃなくてこっちだろう、と言いたくもなるものだ。

以上のように、白か黒かしか見えない純潔主義と、それに乗じて統制国家を作ろうとする革新官僚。そして、それらを抑止するどころか、火に油を注ぐマスコミ。 これを見て、みなさんは何を思うだろう。

これこそ、まさに「新しい戦前」ではないのか。

貧しくなっていく国民(ついに●一人あたりGDPで台湾に抜かれた!)、尖閣問題に見られる国家主義的な意見の台頭を見ても、そういう懸念を感じざるを得ない。

このブログの読者のみなさんには、最後の最後まで、理性を失わず、国家やマスコミの姿勢を批判する視点を忘れないでいただきたいものである。

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Comment

●TBありがとうございます。

<都青少年育成条例>山口一臣氏:志布志事件の時の鹿児島県警本部長が名誉回復のためにこの条例を通したい
http://sun.ap.teacup.com/applet/souun/3824/trackback

お元気そうで何よりです。
早雲 | 2010年12月20日(月) 12:19 | URL | コメント編集

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