2010年12月22日4時21分
神奈川県警厚木署で、夜間の当直中に事件受理が10件を超えた場合、約50人の当直者全員に少年補導や交通取り締まりといった「残業」を強制していたことがわかった。同署関係者からは「管内の治安が良くなっているようにみせるため、積極的には受理するなと言っているに等しい」との声が上がっている。
事件を受理した「認知件数」は治安のバロメーターとされ、県警は「前年比減」を目標に掲げている。地域の事件が減るよう努力しようという趣旨だが、同署関係者は「発生したことは仕方がないのに、受理数に目標とペナルティーを課すのはそもそもおかしい」と批判。清水岩雄署長は「結果的に不正につながる可能性も否定できない。見直しを検討したい」としている。
清水署長の説明や関係者によると、「残業」は同署長の指示で今年4月ごろに始まった。午後5時15分〜翌日午前8時半の当直時間中も暴行、窃盗、ひったくり……と様々な被害の連絡があるが、受理した認知件数が10件を超えた場合に「残業」を課している。長い場合は、午後5時ごろまで街頭に出て少年補導や交通取り締まりを命じられるといい、30時間を超える連続勤務のケースもあるという。
厚木市など3市町村を管轄する同署の管内人口は約27万人で、県内有数の大規模署。管内では5月以降、認知件数が前年比で大幅に減り、昨年5〜11月は300件台後半〜400件台だったのが今年は200件台になり、特に6〜8月は前年の6割台だった。
ただし、署関係者の一人は「署員には残業を嫌って事件処理を抑制する雰囲気が広がり、さほど重要な事案ではないと考えたら、出してもらうべき被害届を求めないケースがある」と打ち明ける。