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舞鶴女子高生殺害:状況証拠争点に 公判前整理手続き終了

 京都府舞鶴市の女子高生殺害事件で殺人と強制わいせつ致死の罪に問われた中勝美被告(62)が検察の調べに「被害者のバッグを捨てる真犯人を見た」という趣旨の供述をしていることが分かった。京都地裁で16日に公判前整理手続きが終了し、21日に初公判が開かれる。直接的な証拠はなく、中被告は一貫して否認。検察は状況証拠での立証を目指しており、公判ではこの供述の信用性と事件前に現場付近で目撃された人物が中被告かどうかが大きな争点となる。【古屋敷尚子】

 検察・弁護側の関係者によると、被告は事件が起きた08年5月7日、現場周辺で「赤いバッグを川に捨てる人物を見た」と供述し、バッグの中身についても具体的に話した。被害者のバッグや遺留品の一部は事件発生後に府警が公開したが、供述には非公開のものも含まれているという。

 被告は「真犯人」の実名を挙げているが、事件に関与していないことは捜査当局が確認済みだという。検察は被告が他人に罪を着せようと虚偽の供述をする中で、犯人しか知り得ない秘密(バッグの中身)を暴露したと位置付ける。他方、虚偽供述との見方は弁護側も同じだが、バッグの中身についてはいいかげんに話しただけとして信用性を争い、検察の誘導があったと主張する方針とみられる。

 被告の事件前の行動については、市内のスナックの店員が同月7日午前1時前まで店で酒を飲み、自転車で帰ったと証言。1時半以降、被告宅に近い現場へ向かう府道沿い3カ所の防犯ビデオに男女らしき2人の姿が映っている。検察が専門家に依頼した鑑定では、映像の自転車を押す男が「被告と極めて似ている」との結果だったが、弁護側依頼の別の鑑定では「人物は特定できない」という結果が出たという。

 また、午前1時20分ごろに府道を車で通った目撃者と午前3時過ぎに現場から約300メートルの交差点を車で通った目撃者がいずれも「被告に似た男が自転車を押して女性と歩いていた」と証言。スナックを出てから矛盾のない時間であり、検察はビデオの人物と同様、目撃された人物は被告だと主張。弁護側は「目撃者の証言は変遷しており、信用できない」と反論する見通しだ。

 ◇中被告、「これという証拠はない」

 京都拘置所で今月2日、記者の接見に応じた中被告は、「真犯人」の実名を挙げ、「何にもしてないのに逮捕されてもうて……」と無実を訴えた。

 中被告は窃盗容疑で逮捕された約5カ月後の09年4月、女子高生への殺害容疑で逮捕された。「窃盗で逮捕される前、警察官の尾行がついてたから(殺人容疑で)逮捕されるんだろうなと思ってた。びっくりせんかった」と振り返った。

 初公判を控え、「今さら緊張なんてせん」と語り、「これという証拠はない。裁判で犯人でないと分かる」と自信を見せた。

 接見の2日後に届いた手紙には、「犯人でもないのに長い間拘束され、毎日嫌になる。暑い暑いと思っていたがもう冬。過ぎ去れば早いが、これからの事を考えると長く感じられる」とつづっていた。

毎日新聞 2010年12月17日 14時07分

 

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