割引クーポン共同購入サービスのグルーポンにも、独禁法違反とも取れる行為があった。本誌の指摘を受けたグルーポンは急遽、規約を変更した。相次ぐ不公正取引の背景にあるのは、インターネット業界に内在する特殊な競争環境だ。
12月8日、会員数2000万人を超える携帯電話の人気ポータル(玄関)サイト「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)が、独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立ち入り検査を受けた。ネット業界を揺るがしたこの事件の記憶が新しい中、本誌の調査で、新たな法令違反とも取れる行為が明らかになった。今度の主役は、最近市場が急拡大している割引クーポン共同購入サービスの国内最大手のグルーポン・ジャパンである。
同社は、飲食店などの割安クーポンをインターネットで販売するサービスを提供する。飲食店のクーポンを扱う契約を結ぶ際に、競合他社との取引を禁止する条項を盛り込んでいたのだ。 本誌が入手した契約書によれば、「パートナーの義務」として定められている規約の中に、「パートナーは、掲載期間の終了後 24カ月間、理由の如何を問わず、日本国内におけるグルーポンと類似のウェブサービス(Piku、KAUPON、ポンパレ、Qponを含むが、これらに限られない)において出稿、掲載等をしないものとし、また、パートナーサービスと同一又は類似のサービスを提供しないものとする」とある。この条項は7月から規約に含まれていたという。
本誌の指摘後、急遽規約変更
もちろん、こうした行為は、独禁法第2条9項に定める不公正取引に該当する可能性がある。
ただし、同社は本誌の取材後に規約を急遽変更。12月10日にはこの条項をすべて削除した。本誌の取材に対し、グルーポン・ジャパンの幹部は語る。
「独禁法は当然理解していた。市場が急速に形成され、中でもグルーポンが急成長を遂げたため、独禁法の定める有力な事業者に該当しつつあったことは認識していた」
DeNAに加えてグルーポン…。先に表ざたになったDeNAに対する公取委の立ち入り検査理由は、モバゲータウン上で動作するゲームソフトなどを開発する取引先のゲーム開発会社に不当な圧力をかけたことだが、実は、急成長するソーシャルネット業界では、こうした法令違反行為は、氷山の一角にすぎないようだ。
「圧力をかけているのはモバゲーだけじゃない」――。
こう声を荒らげるのは、携帯電話など向けにゲームを開発するKLabの真田哲弥社長だ。同社は、「モバゲータウン」と会員獲得でしのぎを削るライバル、「GREE」を運営するグリーにゲームを供給している。そのKLabは今年11月、競合するモバゲータウンにゲームを提供したところ、グリーからある“圧力”がかかったという。
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