知的障害者の女性に対する強制わいせつなどの罪に問われた元タクシー運転手(61)の控訴審判決で、福岡高裁宮崎支部は21日、被害女性に告訴能力がないとして公訴を棄却した一審宮崎地裁延岡支部判決を破棄し、宮崎地裁に差し戻した。榎本巧裁判長は判決理由で「被害者には被害状況の認識があり、告訴の意味を理解して被告人の処罰を求める意思を示した」と指摘、「一審判決は事実認定を誤り、不法に公訴を棄却した」と述べた。
一審判決が「(当時20代後半だった)女性は相応の人生経験を積んでおり、社会的能力がある」とした精神鑑定医の意見を否定した点については「鑑定意見を十分に尊重しなかった判断手法は不適切で容認できない」とした。
さらに「法廷での応答が迎合的だ」との一審判決の指摘を疑問視。「法廷の重圧や言葉による意思疎通が苦手という知的障害者に対する十分な知識のない法律家の質問に問題があった疑いもある。告訴能力の有無と結び付ける評価は不適切」と述べ、「一審判決は被害者に過度な高度の知的能力を求めている」として、女性の告訴能力を認めた。
一審宮崎地裁延岡支部判決は、女性について「質問者(検察官)の誘導なしに自発的に説明することができていない。告訴の何たるかを理解する知的能力に欠ける部分があると言わざるを得ない」などとして告訴能力を否定、起訴そのものを無効としていた。
起訴状によると、元タクシー運転手は宮崎県西臼杵郡内に住んでいた2009年2月、女性を車で連れ回し、車内で体を触るなどしたとされる。
=2010/12/21付 西日本新聞夕刊=