第57回 朝日広告賞(第1部 一般公募の部)
第1部は、審査の過程で、
「表現以前に、考え方がいい、と思わせてくれる作品を評価したい」(児島令子氏)
「入賞作品が毎年ワンパターンにならないよう、新しい基準を求めたい」(佐々木宏氏)
「実際に商品に触ってみたい、もっと知りたいという気持ちまで持っていってくれる表現を推したい」(タナカノリユキ氏)
「暗い時代だからこそ、元気でお気楽な作品や、ロマンチックでキュンとするような作品を選びたい」(森本千絵氏)
といった審査委員それぞれの評価基準が述べられ、投票が進められた。最高賞に輝いたのは、小学館の作品(1)。大人が子どもに言い聞かせていることを、大人自身が無視している現実に目を向けた作品には、
「戦争の写真がとてもリアルに感じた」(浅葉克己氏)
「コピーに暗さや説教臭さは感じなかった。企業広告ともいえる」(前田知巳氏)
「社会的なテーマを重苦しくなく、わかりやすい言葉で伝えているところがいい」(タナカ氏)
といった評価が寄せられた。
準朝日広告賞は、3点。まずは、出版共通課題を扱った作品(2)。“イマドキ”の若者たちのスナップ写真に赤塚不二夫漫画の名ゼリフをあわせた。
「金髪の女の子の表情など、写真が印象的だった」(原研哉氏)
「荒削りだが、今後の成長を応援する意味で評価。“シェー”を知らない世代が“シェー”をやっている感じが、あっけらかんとしていてよかった」(タナカ氏)
「時代を肯定するようなポジティブな雰囲気に好感。入賞すれば、朝日広告賞に参加したい若者が増えるのでは、という期待が持てた」(森本氏)
美しい日本名山をグラスに映し、天然水のおいしさを伝えたのは、サントリーの作品(3)。一度選外となったが、「おいしそうな水」と思わせるビジュアルの完成度の高さを惜しむ複数の審査委員の声に推されて再評価を得た。
年賀状をテーマに、人と人のきずなを表現したのは、日本郵便の作品(4)。
「考え方がすてきだと思った。作り手の思いが強く伝わってきた」(児島氏)
全体としては、「今年は図抜けたアイデアが少なかった」との意見が大半を占めた。審査委員が求めるのは、新しい表現に貪欲に挑戦する姿勢だ。
- 入選
- (5)メルセデス・ベンツ日本
〈smartの魅力を自由に表現してください〉
北林誠、松井孝文、砂本枝里香
「一目瞭然のビジュアルに引きつけられた。高齢者が小回りがきく車を乗ること自体がスマート、というとらえ方もできる」(葛西薫氏) - (6)トンボ鉛筆
〈TOMBOW文具のブランド広告〉
高柳圭吾、赤坂朋晃
「すごいスピードで好きになった」(葛西氏)
「ロマンチックでキュンとする、という意味で気になった」(森本氏) - (7)YKK AP
〈「窓を考える会社YKK AP」〉
鑓田佳広
「見て瞬間的にいいなと思った。コピーがなくても窓の向こうでいろんなことが起こっていることがわかる」(児島氏)
「アイデアが乱暴な感じが好き」(佐々木氏) - (8)サッポロビール
〈ヱビスビールのブランド広告〉
高野大輔、高野加織
「『エビスビール飲んでます。』というコピーの自慢げなところが面白かった」
(佐々木氏) - (9)小学館
〈小学一年生〉
磯貝陽一、柴田隆浩
「小学校の6年間がスゴロクでうまく表現され、コピーもいい。親子で楽しめそう」(佐々木氏) - (10)小学館
〈小学一年生〉2点シリーズ
田中大地、川上智也、海老原庸介
「記事面にもう一工夫あるとよかった」
(タナカ氏)
「完成度はダントツだと思った」(原氏) - (11)ロッテ
〈バニラアイス「爽」〉3点シリーズ
瀬戸康隆、岡田能征
「気持ちいいビジュアル」(浅葉氏)
「表現の完成度が高い」(原氏) - (12)三越
〈企業広告〉
鈴木智也、阿部広太郎
「三越の立ち位置とパッケージの柄のとらえ方が絶妙」(原氏) - (13)アサヒ飲料
〈三ツ矢サイダー〉
山下布美子、山田圭
「ぱっと見、気持ちよく、おいしそう」(前田氏) - (14)貝印
〈お菓子を作りたくなるような広告制作〉
青木昌三、勅使川原守、安井淳一郎、大澤真祐子、吉田多麻希、堀絵里香
「コピーだけとらえるときついが、お菓子を作りたくなる広告になっている」(児島氏)