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連載・特集

鳥取県選出 5国会議員 新春座談会

地域経済・農業再生
2010/01/03の紙面より

 2010年が幕を開けた。昨年夏の衆院総選挙で民主党が圧勝し、政権が交代。鳩山政権による新しい政治が始まった。しかし、デフレは長期化が予測され、日本経済再生への道は遠い。社会保障などへの国民の不安感もぬぐえない。日本の政治、経済はどうあるべきか、また鳥取県の針路をどう舵取(かじと)りするか。新春に当たり、攻守入れ替わった鳥取県選出の5人の国会議員に政局や経済対策をはじめ農業、道路整備、福祉・医療、外交問題など幅広く語っていただいた。
−出席者(50音順)−
赤沢 亮正衆院議員
石破  茂衆院議員
(自民党政調会長)
川上 義博参院議員
田村耕太郎参院議員
湯原 俊二衆院議員

司会・編集制作局長 森原昌人
 

衆院議員 
赤沢 亮正氏
衆院議員 
石破  茂氏
参院議員 
川上 義博氏
参院議員 
田村耕太郎氏
衆院議員 
湯原 俊二氏

戸別所得補償制度


 −政権交代によって現実のものとなった民主党の「戸別所得補償制度」が鳥取県の農業に与える効果、影響をどのように展望しますか。

 川上 戸別所得補償制度によって大規模、小規模、兼業などのすべての農家が安心して営農できる環境を整備することと、生産者に直接お金を支払うことによって農家農村にいい影響が出ると確信しています。昔、米価という形で直接生産者に支払われていた。その復刻版だと考えればいいのです。

 10年度はモデル事業としてコメで先行実施し、明らかになった課題を検証した上で麦、大豆、飼料作物などに広げていきます。そして畜産、酪農、漁業についても生産者の所得確保につながる制度の検討を加速させます。漁業については調査費を計上しています。

 湯原 戸別所得補償制度を論じる前に、今の鳥取県の農業現場や中山間地域を見ると、これまでの国づくりで人、物、金が都会に流れる東京一極集中によって地方は過疎化、高齢化しました。この現状をどうするかを考えなければいけない。地方経済の柱は中小企業と農林水産業。農家の所得が半減して後継者が育たず、耕作放棄地が増え、集落の活力が減る中、民主党は農家に直接支援する発想で戸別所得補償制度の政策を打ち出しました。

 赤沢 年末になってもなお制度の内容が不明のため農業現場は大混乱しています。それ例外に心配な点は大きく言って三つあります。一つは、全国一律単価によりもうかっている農家にも金を配るため、余力ができる農家は米価引き下げに応じ、結果的に全国の米価が下がって翌年度の所得補償予算をさらに増やさなければならず、翌年度はさらに米価が下がるという循環が生じて、そのうち財政的に持たなくなります。

 二つ目は、現在、畜産酪農、野菜果樹農家もつらいのにコメから始める理由は何か。三つ目は、農産物貿易自由化の恐れです。戸別所得補償制度が本格実施となる11年度以降の自由化に応じる日米FTA(自由貿易協定)の締結やWTO(世界貿易機関)の農業交渉は進めてよいという方向に歩むことが最も恐ろしいシナリオです。

 石破 天下の愚策です。しかも戸別に所得を補償するのではなく、差額を払うというだけの話。付加価値をつけて高く売らなくても、コストダウンの努力を一切しなくても差額を払ってもらえるのなら誰がまじめに働くでしょう。これを社会主義政策と言わずして何と言うか。

 今はまだ日本農業の生産額は世界第5位ですが、基幹的農業従事者の方々の6割が65歳以上で、10年たてば6割が75歳以上になる可能性がある中、戸別所得補償制度では間違っても後継者は生まれない。また誰も農地を貸さないので大規模化は起こらず、コストダウンも付加価値を高めるということも起こらない。

 田村 国家財政が困難な時に継続的な政策として財源をどこから捻出(ねんしゅつ)するのか。こんなことしたら破綻(はたん)する可能性もあります。打ち出の小づちはありません。また頑張る農家が損するのではないかと心配しています。鳥取県の農業は日本の経済と密接に関係しています。昨年の梨の出来は良かったものの値段が下がった。景気が悪いから進物市場でも高く売れません。また私は牛を飼っていて畜産の当事者ですが、高値の牛ほど値が付かず投げ売りになり、飼料の値上がりもあって環境は厳しい。

 景気良くないと、良い物を作っても売れない時代です。鳥取県産のスイカや梨を中東で売るほか、香港市場でも鳥取県産和牛や果物をセールスするつもりですが、メーン市場は日本です。日本でブランド化するためには消費者を元気にしなければいけません。

県に必要な成長戦略


 −人口60万人を割った鳥取県の地域経済にとって必要な成長戦略は何と考えますか。そのための政策は。

 田村 私が取り組む地域ファンドは、例えば水木しげるロードの地元の方々や妖怪ファンが出資して当事者意識でアイデアを出し合いながら地域づくりを進め、ホテル建設や町並み整備を通して線から面へ開発し、地域の魅力を高める発想です。また、鳥取砂丘で歌手のMISIAさんの力を借りてエコイベントを企画中ですが、観光資源を掘り起こして国内外に広げることは大切です。

 さらに、中東のアブダビ投資評議会最高投資責任者を鳥取に招待して鳥取大学乾燥地研究センターの技術を紹介しました。鳥取県の砂漠緑化や乾燥地での食料生産技術、さらに氷温技術などは世界の新興国に貢献し、収益を生むことができると考えています。

 川上 私は、なぜ地方参政権を一生懸命取り組んでいるかと言えば、今の日本は“戦後”の状況に陥り、夢も展望も見いだせないからです。ではどこに展望を見いだすか。一つは定住外国人を受け入れ、多民族多文化国家を作ることです。日本は少子化がどんどん進んでいる。そのリスクを回避するため定住外国人を受け入れて地域社会をつくることが必要です。

 定住外国人と一緒に力をあわせて新しい社会を形成する。その一里塚が地方参政権だと思っています。それは結果的に国の安全保障につながるという信念を持ってます。劇的に日韓関係は変わり、北朝鮮も含めた朝鮮半島の安定化にもつながっていくと信じています。鳥取県には遅れている道路、鉄道、通信のインフラ整備を着実に行うことが最低限必要です。その上で、この地でしかないものをつくり上げていくことでしょう。

 赤沢 観光資源や農林水産業の付加価値を高めることが大切です。観光では島根県も含めた広域観光圏域に滞在してもらうように売り込む。そのため大山や水木しげるロードなどの見どころを国の内外に広く発信する。昨年就航した境港の国際フェリーも期待の星です。農林水産業については6次産業化、すなわち地元の食材を地元の調理法によって地元のレストランで提供する。野菜などを加工して付加価値を高める取り組みは自公政権の時に支援しました。

 民主党の目玉の政策は地方に厳しいものが多い。例えば、高速道路無料化と言っても、鳥取県は高速道路の整備が遅れているため、うれしくない。子ども手当と言っても、子どもが多いのは都会です。地方より都会に優先的に予算を配分する発想を改めてもらう必要があります。

 石破 鳥取県の来年度の高速道路整備事業費の削減幅は今の試算で45%から55%と、全国平均の20%を大きく上回っています。高速道路が十分あるならともかく、つながっていないので、まずは社会資本の整備をして雇用を確保しなければ成長するわけがない。遅れている地域の道路整備を急ぐのが均衡ある国土の発展だと思います。

 鳥取県の成長産業は観光。岐阜県の飛騨にはたくさんの人が来る。お年寄りにとってバリアフリーの町だからです。土日はある程度人が来るかもしれないが、平日の稼働率をいかに上げるかを考えることが必要。そこでお金を使ってもらう人たちはどういう人で、その人に向いた施策は何か。成長戦略は金太郎あめみたいにみんな一緒ではなく、うちの県はこれだというものを打ち出す知恵が必要です。

 湯原 環日本海交流を進め、国内観光でも交流人口を増やし、環境分野にも取り組むべきです。しかし、その前段として中央集権から地域主権の国づくりに変えなければいけません。地域が同じようなまちづくりを進めるのではなく、自らの考えで行動し地域を発展させる方法を支援する政策を進めれば、地域は個性的なものになる。基本は国づくりの在り方を変えることです。

 −民主党マニフェストの地域主権は今ひとつピンと来ませんが。

 湯原 地方分権は中央の官庁が持つ権限、財源を地方に与えることですが、これに対して地域主権の発想は地域が自立する上で最初から備わっていること。地域の市町村でできないことは都道府県で対応し、最終的には国が外交、防衛などを担う。中央からではなく、まずはその地域で判断する行政システムのことです。

 有権者である国民には投票の権利と責任があり、首長、議会を選んだ後は「無関心」ではいけません。司法制度でも裁判員裁判が始まりました。米軍普天間飛行場移設問題は国民的議論になり、外交も防衛も司法もまちづくりも国民は「責任」から逃げられませんよという流れにあります。成熟化した民主主義が求められています。政治家だけで議論すれば良い、国民に知らせなくて良いという政治手法は変わってくる。どん底で変えなければいけない、との考えで政権交代が選択されたと思います。

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