2010年12月21日0時7分
日産自動車が20日、量産型電気自動車(EV)「リーフ」を国内で発売した。2012年までに欧米や中国などでも順次販売を始め、環境対応車分野における出遅れを一気に挽回(ばんかい)しようともくろんでいる。
しかし本格的なEV普及には課題も多い。
一つは走行距離の短さと、それを補う充電インフラの整備。日産は独自に全国2200の販売店に充電ステーションを設置済みというが、当面は自宅周辺での近乗り中心の利用となる可能性が高い。
もう一つは価格だ。
リーフは国の補助金を活用すれば最低約298万円で購入できる。以前に比べて安くなってきたとはいえ、先述の理由からセカンドカー的な利用が多いであろうことを考えると、まだ割高である。
一方、ライバルのトヨタやホンダなどは、当面はハイブリッドカーを環境対応車の本命として、家庭で充電できるプラグインハイブリッドカーの品ぞろえの充実を図っている。
また、テスラをはじめとする新興メーカーは、内燃機関からモーターへという自動車の大転換期に乗じて一気に旧勢力に取って代わることを狙っている。
そしてそのキーデバイスである蓄電池でも、今のところ日本企業が世界のイニシアチブを握るが、韓国勢など新興勢力の追い上げが急で、各国の政府を巻き込んだ激しい競争に突入しつつある。
デバイスを含めた環境対応車の大競争時代の始まりであり、しばらく目が離せそうにない。願わくは日本企業に覇権を握ってもらいたいが、それには中期ビジョンに基づく政府との連携が不可欠だ。
しかし現在の政治に果たしてそうした戦略的取り組みが期待できるのだろうか。極めて不安である。(H)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。