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民主党の小沢一郎元代表が菅直人首相に対し、自らの政治とカネの問題について、衆院政治倫理審査会での説明を拒否する考えを伝えた。予想されたこととはいえ、その重い政治責任を果[記事全文]
名古屋市の河村たかし市長が市議会議長に辞表を出し、出直し市長選への立候補を表明した。この街では、河村氏が呼びかけた議会解散の是非を問う住民投票の実施が決まったばかりだ。そのときになぜ辞職なの[記事全文]
民主党の小沢一郎元代表が菅直人首相に対し、自らの政治とカネの問題について、衆院政治倫理審査会での説明を拒否する考えを伝えた。
予想されたこととはいえ、その重い政治責任を果たそうとしない小沢氏のかたくなさに驚く。
もう時間を浪費してはいられない。菅首相と党執行部は、より強い姿勢で小沢氏に対さなければならない。
当面、政倫審への出席を求める議決を目指すとしても、小沢氏があくまで出ないという以上は法的拘束力のある証人喚問を実現しなければなるまい。
小沢氏は首相の説得を拒んだ理由に、近く強制起訴され、裁判が始まることを挙げた。
もとより、法廷で「潔白」を訴え、刑事責任のないことを主張するのは、小沢氏に与えられた権利である。
しかし、法的責任と、政治家が負うべき政治責任とはおのずから異なる。あまりに当然のことを小沢氏に対し、繰り返し指摘しなければならないのは極めて残念だ。
有権者によって選挙され、政治権力を信託された政治家は、「国民代表」としての政治責任を負う。これは近代国家の統治原理の核にある考え方である。
立法権を委ねられ、それを行使する国会議員は、単に法律を守っていればそれでいいという立場にはない。
例えば、長く続く政治とカネの問題をどう解決するのか、政治資金の不透明さをどう解消していくのか。そうした問題に立法府の一員として取り組むべき政治家が、自ら疑惑を招いてしまったとあれば、国会で説明するのは当たり前すぎることだろう。
思えば小沢氏には、自身の政治責任に自覚的と見られたときもあった。
2004年には国民年金への未加入を理由に党代表選立候補を見送った。法的には問題ないとしながら、「年金制度改革を国民に理解してもらわなければならない立場」だと言い、政治責任をとったのだった。
しかし、いかんせん、その政治責任に対する姿勢は著しく一貫性を欠く。
今年6月の鳩山由紀夫前首相との「ダブル辞任」直後の党代表選出馬。そして今回。かつて政治改革推進の立役者だったとは思えない判断である。
小沢氏は昨年の総選挙の立候補予定者91人に約4億5千万円を配ったが、その原資に旧新生党の資金を充てていたことが明らかになっている。税金も受ける政党の資金を個人の政治資金として配ってよいのか、小沢氏の説明を聞いてみたい。
小沢氏の問題にけりをつけなければ、来年早々の通常国会は動くまい。差し迫った多くの政策課題にも手がつけられない。菅首相と民主党執行部に与えられた時間は少ない。
名古屋市の河村たかし市長が市議会議長に辞表を出し、出直し市長選への立候補を表明した。この街では、河村氏が呼びかけた議会解散の是非を問う住民投票の実施が決まったばかりだ。そのときになぜ辞職なのか。
「信を問いたい」と言うが、昨年春の市長選で51万票も集めた河村氏への地元の人気は今も高い。本当の狙いは、盟友が立つ来年2月の愛知県知事選にあわせて市長選をすることだ。在職のままでも応援はできるが、ダブル選挙にして話題を集め、知事候補を応援したいらしい。
政令指定都市で初めての住民投票も知事選と同じ日に行われる。でもいまや、かすんでしまった。これから減税や財源について、市長と議会の主張の違いを市民にじっくり考えてもらうはずだった。11月に市総合文化会館建設をめぐる住民投票があった長野県佐久市では、21回も説明会があった。
だが河村氏は辞職の会見をすると、盟友とともに大阪に向かった。橋下徹知事が代表を務める地域政党「大阪維新の会」の会合に出て、大阪都構想と並び、中京都構想を論じた。
突拍子もない行動力が、河村氏の支持の源泉だ。共産党を除き、オール与党で長年なれあってきた議員たちと対決する姿は、喝采を浴びた。
議会リコールで掲げた目的は、市民税恒久減税、市民参加の地域委員会の拡充、議員報酬半減の三つだった。いずれも、河村氏が市議会を説得し切れずに否決された。議会解散請求には36万人が有効な署名をした。
しかし、今度はどうだろう。
自治体はいま、予算編成の最中だ。持論の行革で、財源をひねり出してみせるときだ。今年度予算の編成では市民サービスを削り、批判を浴びた。市債残高は、一般会計の2倍近い1兆8千億円もある。この借金を置いても減税を進めるべきなのか。市民もいま一度、冷静に考える必要はないか。
市はこの市長選に2億4千万円をかける。だが、河村氏がこの時期に辞職しても対立する市議会の選挙が同時にあるわけではないし、応援する知事選は市議会の運営に直接影響がない。河村氏は任期を半分以上も残して辞め、自分の行動についてどう訴えるのか。
ダブル選挙に河村氏が出ることで、ともに行動する知事候補も一緒にテレビや新聞に登場し、知名度を上げたいという期待もあるようだ。そうだとすれば、メディアも冷静な報道になるよう自戒しなければいけない。
分かりやすい敵をみつけ、鋭い言葉でたたく。閉塞(へいそく)感の強まる社会で、指摘すべき矛盾は数々ある。だが、それだけでは次の時代を開けない。大きな支持を集めて市長に就いた河村氏は、市民の利益になる政治にじっくりと取り組むときではなかっただろうか。