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【外信コラム】上海余話 今年の漢字は「漲」
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今年の日本の世相を表す漢字は「暑」だったが、上海紙は中国の今年の漢字として「漲(ちょう)」が一番人気と伝えている。漲は水位や物価の上昇を表す動詞。豚肉など食品の高騰が続き、生活苦に悲鳴を上げる中国の庶民の叫びが伝わってくるようだ。
今年で16回目という日本漢字能力検定協会の公募をパクったのか、数年前から中国のネットサイトでも投票が始まった。
11月に消費者物価指数(CPI)は前年同月比5・1%上昇と2年4カ月ぶりに5%を突破した。中国は国家統計も信頼性が薄いが、食品高騰に加え不動産バブルの影響も考えると、上海に暮らす身としての生活実感では5%ではすまないインフレぶりといえる。
中国でインフレが常に敏感な問題として扱われるのは、「経済政策の失敗」との受け止めから、庶民の間に政府批判が広がりやすいからだ。1989年の天安門事件、2005年の大規模な反日デモなど、いずれも10%前後の物価高騰が、社会への不満を顕在化させる引き金になった、とみる関係者も多い。
直接的な政府批判では当局につぶされるが、内陸部で今秋相次いだ反日デモでは、生活苦の不満を「反日」にすり替えた気配が濃厚だ。インフレ進行が反日デモ発生のリスクを高めるとすれば、「漲」のとばっちりは実に恐ろしい。(河崎真澄)