【社説】安保非常事態は延坪島での訓練後も続く

 韓国軍は20日午後2時30分から1時間34分にわたり、西海(黄海)上の延坪島周辺海域で砲撃訓練を行った。この訓練は、延坪島南西の海上に設置された東西40キロ、南北20キロの海域に向けて行われ、着弾地点は北方限界線(NLL)から10キロ以上南側だ。韓国軍は1974年から、ほぼ毎月1回のペースでこの訓練を行っている。

 ところが今回は、この訓練に世界の注目が集まった。北朝鮮が、「(訓練を再開すれば)第2次、3次の予想外の自衛的打撃を加える」と脅迫していたからだ。しかしこの訓練は、大韓民国軍が大韓民国の領海で行うものだ。大韓民国が北朝鮮の脅迫に恐れをなし、通常の訓練さえできないようでは、これは国の主権を放棄するに等しい。

 中国とロシアは訓練の中止を要求し、この問題で急きょ国連安全保障理事会を招集した。その目的が、現在の韓半島(朝鮮半島)での緊張の本質をあいまいにすることにあるのは明らかで、それはつまり、北朝鮮が哨戒艦「天安」を沈没させ、延坪島を砲撃した事実に対する世界の関心を弱めることでもある。中国とロシアは韓国に対して自制を求める前に、北朝鮮を毅然とした態度で非難し、もし再び同じような挑発行為に走った場合には、厳しい制裁が加えられることを明確に伝えるべきだった。ところが両国は、南北の双方に対して単に自制を求めているだけで、これでは北朝鮮に対して第3第4の挑発の機会を与える結果に終わるのは明らかだ。

 韓国軍が西海5島で40年近く行ってきた訓練を、北朝鮮が脅迫してきたために実施できないとなれば、NLLの有名無実化を狙った北朝鮮の外交攻勢と軍事挑発のレベルはさらに高まるだろう。そうなれば、60年以上にわたり西海で南北の領海を分けてきたNLLは消滅し、それによって西海の混乱はさらに深まり、最終的に韓半島情勢が激しい緊張と対立の渦に巻き込まれるのは間違いない。

 北朝鮮は韓国軍による砲撃訓練が行われたこの日、「いちいち対応する価値さえ感じない」との声明を発表し、挑発は行わなかった。しかし韓国軍は、これで北朝鮮の挑発そのものが終わったと考えてはならない。また延坪島での訓練が終わったからといって安心すべきでもない。油断は直ちに奇襲を招くものでもあるからだ。最近も北朝鮮は、「わが軍は口だけではない」とか、「予想できない打撃」などといった言葉を繰り返し、さらにソウル都心の主要施設を攻撃するため、特殊戦ゲリラ部隊まで養成している。彼らは常に大韓民国の急所に狙いを定め、いつ攻撃を仕掛けてくるか分からない集団だ。

 李明博(イ・ミョンバク)大統領は20日、「北朝鮮はわが国の国論が分裂したときを狙っている。最高の安保体制は、国民の団結した力から出てくる」などと発言した。そうであれば大統領はまず、今回の砲撃訓練に対して自分勝手な主張ばかりを展開し、国民を失望させている政界をまずは一致させ、その上で、今の困難な状況を打開するに当たって先頭に立つべきだろう。政界と国民が一つとなり、現在の危機的状況を克服する対策を打ち出すべき状況にあるのは明らかで、またそれは、安全保障の非常事態を乗り切ることのできる最低限の条件でもある。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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