非国民通信

未来なんてあるわけがない

今週の気になったニュース

2010-12-18 22:51:49 | ニュース

 どうにも多忙のため取り上げる時期が遅れてばかりですが、色々と気になったニュースを取り急ぎ3題ほど。

東京都の性描写規制条例が成立 出版界反発「慎重に運用」(共同通信)

 過激な性行為を描いた漫画やアニメの販売を規制する東京都青少年健全育成条例の改正案を採決する都議会本会議が15日午後、開かれた。民主、自民、公明の賛成多数で可決され、条例は成立した。漫画家や出版業界の反発を考慮して、「作品に表現した芸術性、社会性などの趣旨をくみ取り、慎重に運用すること」などの付帯決議が付いた。条例施行は、自主規制については来年4月1日から、販売規制については同7月1日から。

 民主党が結党以来、一貫して石原都政を全面的に支えてきた純然たる東京都の与党であることは多少なりとも政治に関心を持つ人にとっては常識だと思いますが、今回も与党として都知事肝煎りの条例成立に貢献したことが伝えられています。まぁ民主党ですからブレることもある、特に選挙期間中ともなると日頃の行動を翻して、まるで野党であるかのごとき主張を繰り出すこともあった党です。そのせいかどうかは知りませんけれど、今回の規制案に反対する役割を民主党に期待する向きもあったように見えるのですが――ここでは与党としての筋を通したわけですね。

 ある意味では、表現の自由の弊害が出たとも言えます。つまり日本ではヘイトスピーチに関する制限が存在しないこともあって、歴史修正主義や各種の差別的な言動が野放しにされてきた、公職にある人間すらもヘイトスピーチを平然と口にしてきたわけです。そして今回、憎悪扇動の対象となったのが性表現であったと見るべきでしょう。嫌悪感や偏見に基づいて何かを排除しようとする言論が横行する中では、性表現へ向けられたヘイトスピーチも当たり前のように流通してしまうのです。今回の条例成立が意味するのは、「アイツは悪影響がある」という意識さえ広まれば、その悪影響が客観的に証明されるものでなくとも規制の対象としうる、排除の対象としうるということでもあります。根拠など何もないけれど、周りが「有害」だと「思う」ものを規制する、そのための法案が成立したのですから。

橋下氏、大阪市職員に「一族郎党覚悟しろ」 政治活動情報めぐり(産経新聞)

 大阪府の橋下徹知事は12日夜、大阪市鶴見区で行われた地域政党「大阪維新の会」のタウンミーティングで「大阪市職員は政治活動をしている。政治活動に公務員が首をつっこんでくるのはおかしい。負けたときは一族郎党どうなるか。われわれが勝ったときには覚悟しとけよ」と述べた。

 橋下知事は地域の住民団体に対し市職員が維新の会を応援しないよう圧力をかけたとする情報があったと説明。「一族郎党」については「誇張の範囲」としたが「維新の会が市役所をコントロールできるようになればきっちり詰める」と語った。

 今さら橋下発言に突っ込む気にもなりませんが、「自衛隊員にも同じことを言ってみろよ」と思わないでもありません。武器を持たない公務員を悪罵する政治家が有権者の絶大な支持を集めることは、これまた現代政治の常識と化しつつありますけれど、同様に公務員であるはずの自衛隊員には賞賛の言葉が並べられるばかりです。先の暴力装置発言を巡る騒動でもわかるように、それが曲解に基づいたものであろうと、少しでも自衛隊を否定的に語っていると扱われようものなら政治責任を問われるほどでもあります。この国の人間にとって自衛隊とは神聖不可侵な存在なのでしょう。

 「いつまでも学生気分では困る〜」みたいな言論は定番中の定番として知られるところです。とかく日本の職場では、学校教育が否定の対象とされがちですから。では、学生であることを「卒業」させて社会人となるために何を要求されているでしょうか。研修先としての自衛隊は大人気、新人研修の一環として自衛隊に体験入隊させるケースは決して珍しいものではありません。学校で教わったことを捨てさせ、軍隊での教育を受けさせることで「社会人」として認められるとしたら、要はこの社会が軍隊をこそ「範」としていることを意味しています。そうでなくともニートや引きこもりを自衛隊に入れろなんてことを主張する人気政治家も多々いるわけで、教育者としての自衛隊人気は高まるばかりです。現代日本において「聖職者」と扱われているのは、教員ではなく自衛隊員なのかも知れません。

雇用・投資拡大の「約束」拒否=法人減税で―経団連会長(時事通信)

 日本経団連の米倉弘昌会長は13日、2011年度税制改正の焦点である法人税率引き下げに関連して、減税と引き換えに経済界が雇用・国内投資の拡大を約束するべきだとの意見が出ていることについて「資本主義でない考え方を導入されては困る」と述べた。個別企業が将来の雇用・投資規模を確約することは、株主への責任などから無理であり、「約束」を明確に拒否した発言だ。

 都内で記者団に語った。米倉会長はさらに「新成長戦略に書いてあること(経済活性化に取り組む方針)をないがしろにするのは、政府の『自己否定』だ」と言明。法人税率の5%程度の引き下げに踏み切らなければ、政府の経済運営は一貫した姿勢を欠くことになると指摘した。 

 法人税減税もまた決定されてしまったわけです。しかし、企業の内部留保が積み上がるばかり、非金融法人の現金預金残高が上昇の一途にある、すなわち国内企業が金をだぶつかせている中で法人税減税に踏み切れば何が起こるでしょうか(参考)。現時点ですらも金が余って仕方がないのに、法人税減税でさらに余剰が増える、眠ったまま動かない金が増えるだけです。経済活性化に取り組む気があるのなら、企業が余らせている金を吸い上げ政府が代わりに活用してやった方が遙かにマシと言えます。金がないから事業拡大に踏み込めない企業が多いのであれば減税にも意味はありますけれど、金の有効な使い道を見いだせず徒に自己資本比率を高めるばかりの日本企業に減税するのは、それこそ豚に真珠というものです。

 にも関わらず経済政策上は意味のない法人税減税にこだわるのは、要は「隣の子もそうなのだから」という理由で自分も同じものを欲しがるガキの理屈なのかも知れません。隣の子よりも自分に科される額面の税率が高いことに我慢できない、だから法人税を下げろと駄々をこねるわけです。そして家計のアナロジーみたいな経営感覚が幅を利かせる日本でもあります。お金は使う人に渡してこそ経済活性化に結びつくものなのですが、「無駄遣いする子にはあげません」「大事に貯金するんですよ」と語る母親のような金銭感覚を政財界もまた共有していて、使いもしないところにお金を回そうとするムダが平然と繰り返されているのではないでしょうかね。

 

 ←応援よろしくお願いします

コメント (13) | トラックバック (1) | この記事についてブログを書く | Messenger  Twitter mixiチェック | goo

13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
要約すると (ローリー)
2010-12-18 23:08:41
石原珍太郎…我が儘ガキで変態でレイシスト
橋下徹…インテリぶったヤクザ
米倉弘昌…経済音痴の守銭奴

そういうことですね。
たぶん日本人は「所得の再配分」を嫌ってるのかもしれません (こっぱなお役人(北のほう))
2010-12-18 23:39:01
と、はなっから絶望的なことを言いたかないですが、経済の指標の1つであるGDP(国内総生産)に企業減税は公共事業より効果がない気がするのは気のせいでしょうか?
(公共事業であれば、「真水(用地費を除いた事業費)」は確実にGDPにプラスされますが、企業減税は人件費を増やすか設備投資をしない限りGDPに与える影響は0)
世間に回らないお金なんてただの数字としてしか意味ありませんし、ここ10数年の不況の原因は「企業とお金持ちがお金を使わなくなった」こととしか思えなくなってます。
それで巷で言われているのは「国の無駄使いを全部なくせば(ry」「公共投資を減らして財政再建しないと(ry」…
現況をみると、本当に問題にしなくてはならないのは「無駄使い」より「溜め込んでるところからどうはき出させるか?」だと思うのは私の分析不足なんでしょうか?
アホばかりか…… (頭痛の種)
2010-12-18 23:51:34
橋下含めアホばかりが世の中を動かしますね。
維新の会て…、戦前の昭和維新の会を彷彿とさせます。
誰も気にしないのか、分かっててやってるのか?
どっちも亡国の元ですから、正しいと言えば正しいですが。

あげく法人税の減税とは、あららとしか言えません。
税収を減らして何するつもりでしょう。
消費税増税?
赤字財政は止める気は無いのに?
中国に備えて軍備増強?
右翼さんは馬鹿か?

訳がわからなくなって来ました。
アホ過ぎます。
Unknown (トクメイ)
2010-12-19 00:47:29
雇用・投資の拡大の約束拒否というのは笑えますね。早速減税目的がハズレだったことがあきらかになったようなものでしょう。もうすでにインチキな評論家がさらなる法人税減税の主張をしてるものも見てますが、いったいどこまでずうずうしいんだか。

問題は減税すれば投資や雇用が増えるなどと無批判に信じて減税を支持してしまう国民でしょう。

今後も何度も出てくるだろう消費税増税の話も増税すれば社会保障が充実させてるなどとかってに思い込み安易に賛成すべきではないと思ってます。そんな「約束」はされてませんから。
Unknown (ルーピー)
2010-12-19 11:48:17
 消費税が導入された時に社会保障の財源にするといっていましたが。それでは誰も納得しないので、中国朝鮮の脅威を煽り、軍事費に使って良いという方向に誘導していく、という解釈でよいのでしょうね。
 消費税増税は論外ですが、無税国家論もかなり支持されてしまっていますね。無税国家とはいえ、軍隊は増強しないといけないので、そのための財源をどこから調達するのか。となると、消費税なのでしょうか。竹中は消費税増税には消極的賛成です。おそらく、均一課税にちかいけれど、消費税には及ばない、と考えているのでしょう。竹中は人頭税を理想としています。それは、軍事費の財源として想定していると考えるのが自然なのでしょうか。
Unknown (ノエルザブレイヴ)
2010-12-19 13:05:48
まず2について。
ttp://www.daily.co.jp/newsflash/2010/12/19/0003684897.shtml
こういうのを見ているとやっぱりな、という気はしますがその一方でこの社会が軍隊をこそ「範」としているということは何も今に始まったことではないのかな、というのはあります。まあこの寮長氏の初めての上司は阪急の上田監督で同世代の稲尾監督辺りと比較して厳しい人だったらしいことも影響しているのかもしれないですけど。

3について。
給食費の天引きがどうこうという話があるようです。対費用効果などを考えたら足が出ないかという疑問はありますし、もっと取れるところがあるだろという気持ちも捨て切れないところではありますが、まあ「払いを逃れている!ずるい!」と思われるか否かが重要性の優先順位上位に来るのでしょうね(となると1につながるのでしょうか)。
Unknown (トクメイ)
2010-12-19 21:22:57
すいません。誤字です。「社会保障が充実させてる」ではなく「充実される」の間違いです。

ついでですが、

世間の議論は何かを上げるとか下げるとか、それに反対ですか?賛成ですか?といったそんな不毛な話ばかりで

どうやったらお金がまわるか?そもそも政策で景気はよくなるのか?どんな社会をめざしているのか?

といった根本の議論がない気がします。
Unknown (凡人69号)
2010-12-19 21:55:20
どうも日本人は何を言っても許してしまう人間を選んでしまうところがありますね。(その反動で、気に入らない人間を蛇蝎のごとく嫌悪し、罵倒するところもありますが)あと、「強力なリーダーシップ」を持った人間の待望論が、小泉、珍太郎、橋下、竹原、河村といった面々を誕生させるきっかけになっているのかも。
法人税減税についてですが、結局内部留保か配当の増加にしかつながらんでしょうね。一方で財界は、「国際競争力」うんぬんいいながら、「国内産業を保護しろ」というダブスタぶりも発揮しそうですが。
Unknown (不肖の弟子)
2010-12-19 21:57:42
扶桑社新書で韓国企業に関する書籍を立ち読みしてきました。
あちらでも法人税減税をしていますが、その歪みが出ていることをこの本で指摘していました。
大企業による中小企業の買収に伴う問題や李明博大統領批判もありましたが、「韓国とは違う」と沸点の低さを露わにして言いきる人間がいることを想像すると頭が痛い限りです。
すいません、追記です (凡人69号)
2010-12-19 22:24:27
言葉足らずのところがあったので追記を。もし、日本経団連が法人税減税を他国からも企業を呼び寄せるなどして活性化させるためだとしたら、政府に「自分たちは守ってね」というのはナシでお願いしたいところです。
とはいえ、国際競争力うんぬんといったところで、それをきちんと生かそうとする日本企業などないに等しい気もしますが。
(新聞や経済誌やテレビ番組などは「まだ引き下げが足りない」と言っているようなので、日本経団連にとっては好き勝手なこともいえるのでしょうけど)
Unknown (TK)
2010-12-19 22:53:41
橋下の役所の公務員を敵視するスタンスは絶妙にうまいなぁ、と。
確かに公務員の政治活動は良くないと思いますが、彼の発言は露骨に市の職員を敵視しています。
残念ながらそれが大衆受けするので、維新の会は選挙では大勝でしょう。

20人に1人が生活保護受給者である貧困の街大阪市で橋下を喜んで支持していいのか疑問ですね。
時代劇とは違うのですから、お役人を叩く人間が庶民を助けるヒーローとは限らないのに。。。
Unknown (yazakikumi)
2010-12-20 14:08:26
果たして日本にはフリードマンのようなリバタリアン、新自由主義者がいるのか疑問です。

法人税は下げながら、消費税は上げろという。
普段は規制の撤廃を訴えるくせに、経済危機になれば公的資金の導入を求める。
国家は市場に介入するなが主張の癖に、円高の対策を打たないことを批判する。
パターナリズムを嫌い、リベラル派よりも広い範囲で適用を求めるはずの自由は萎縮する。

いっそ徹底されたリバタリアニズム、新自由主義社会になればまだ少しはましというものです。
朝日新聞の罪は重い (特命希望)
2010-12-20 19:44:30
こんばんは。この法人税の減税、ここ一ヶ月の朝日新聞がやたらと要求していました。
外国からの投資を呼び込むだの何だのといっていますが、そもそも消費が冷え込んた状態だからわが国で商売をするのを外国企業がためらっているのではないでしょうか。
その一方で消費税を上げろとも社説で言うあたり、もう無茶苦茶です。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。
 ※ 
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。
※文字化け等の原因になりますので、顔文字の利用はお控えください。
下記数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。この数字を読み取っていただくことで自動化されたプログラムによる投稿でないことを確認させていただいております。
数字4桁

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
朝三暮四よりまだ悪い (エゾ狂人日記)
 自分の子ども夫婦が、マイホームを建てるためといってむちゃくちゃな倹約をしているとしよう。  だが、そのために孫たちはいつも腹を空かせ、粗末な衣服で震えている。いかに家を建てるためとはいえ孫たちがあまりに不憫なのであなたは幾ばくかの蓄えを子ども一家に提...