2010年11月23日 14時11分
北朝鮮の新たな核開発により、菅政権は米国、中国、ロシアに次いで、外交での新たな火種を抱え込むことになった。ただ、昨年9月の政権交代以降、核問題をめぐる6カ国協議や日朝実務者協議など北朝鮮に関する公式的交渉は開かれておらず、菅政権の対北朝鮮外交の戦略は未知数。当面は米韓両国との連携を強調するにとどまる見通しだ。
「北朝鮮の核開発は絶対に認められない。そういう立場で米国や他の国々としっかりと連携して対応していきたい」。菅直人首相が22日に発したメッセージは、首相官邸で記者団に語ったこのふたことだけだった。仙谷由人官房長官も同日の記者会見で「事実であれば大変憂慮される事態」「断じて容認できない」と批判しながら関係国との連携を強調するにとどまった。
最近、北朝鮮は6カ国協議再開を求めているが、日本政府は米韓両国との連携を重視して再開を急がず、非核化に向けた具体的行動を北朝鮮に求めていくことで足並みをそろえている。協議再開よりも、まず韓国哨戒艦沈没事件(3月)でこじれた韓国と北朝鮮の関係改善に向けた動きを注視すべきだと強調する外交当局者も少なくなく、日本側から当面、北朝鮮問題について積極的な働きかけをする気配はない。
ウラン濃縮施設公開について、外務省幹部は「事実認定は難しいが、プルトニウムによる核開発にウラン濃縮が加わったことで北朝鮮の核問題解決のプロセスはより困難になった」と受け止め、「焦って何かやる必要はない、という認識は変わらない」と冷静な対応を強調する。一方、別の幹部は「一切やらない、ということでもない」と話し、事態の変化に備えた措置の必要性も訴えた。【犬飼直幸】