北朝鮮:核爆弾、年2個分 「拡散」脅威増す

2010年11月23日 14時8分

 【ソウル大澤文護、ワシントン草野和彦】北朝鮮による寧辺(ニョンビョン)のウラン濃縮施設の公開は、「核兵器のない世界」を目指す米国に大きな衝撃を与えた。北朝鮮が濃縮ウランを製造する技術を手にしたとなれば、弾道ミサイルへの装着可能な小型核弾頭の開発や、濃縮ウランの輸出など「核の拡散」が現実の脅威となるためだ。日米韓は「連携した対応」を確認したが、中国は「沈黙」したままで、6カ国協議の行方も不透明さを増している。

 ソウルを訪れた米国の北朝鮮政策を総括するボズワース特別代表は22日、北朝鮮による新設の濃縮ウラン製造可能な遠心分離機の公開について、「新たな挑戦」「極めて困難な問題」などと強い調子で憂慮を示した。

 韓国専門家によると、濃縮ウラン使用の核爆弾を年1個生産するには、1000台の遠心分離機が必要。北朝鮮の主張通り2000台の遠心分離機が稼働中とすれば、年2個の濃縮ウランによる核爆弾製造の基礎を手にしたことになる。

 さらに、1000台の遠心分離機はわずか900平方メートルの建物内に収めることが可能で、秘密裏の製造に適している。今後、高濃縮ウランを大量に製造し定期的な核実験を続ける能力を獲得すれば、大陸間弾道ミサイルに装着する小型核弾頭の開発も可能だ。

 ◇施設「驚くほど近代的」

 北朝鮮の濃縮ウラン施設について、現地を見学したヘッカー米スタンフォード大教授は「驚くほど近代的」と語った。米シンクタンク「科学・国際安全保障研究所」(ISIS)は、この規模の施設では兵器に使えるウラン26キロの生産が可能と分析している。

 また北朝鮮は、シリアの原子炉建設支援や、リビアへのウラン提供をした疑いがあり、核開発を進めるイランだけでなく、テロ組織の手に高度な核技術が渡るのは米国にとって悪夢のシナリオだ。

 6カ国協議では、北朝鮮の友好国である中国が議長を務め問題解決を主導してきた。しかし、聯合ニュースは「中国が(ウラン濃縮施設の建設を)事前に知らされていなかった可能性がある」と報道。ボズワース代表は「6カ国協議のプロセスはまだ生きている」と強調したが、6カ国協議がすぐに問題に対応できる可能性は極めて低いのが現状だ。

 米日韓は、北朝鮮が非核化への真剣な態度を示すまで6カ国協議再開に応じないとしているが、ヘッカー教授は「問題をさらに悪化させる」とし、「関与(対話)」の必要性を強調した。

 しかし、韓国の金泰栄(キム・テヨン)国防相は22日、北朝鮮が濃縮ウランで核兵器を作った場合、「すべての手段を使って対応する」と強調、地域の緊張は少しずつ高まっている。

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