TPP:政府「交渉に参加」…「農業と両立」明記で調整

2010年10月22日 2時32分

 政府は近く閣議決定する「経済連携協定(EPA)に関する基本方針」に「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉に参加する」との文言を盛り込む方向で調整に入った。11月13、14日に横浜市で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で議長を務める菅直人首相としては、地域経済の統合を主導する姿勢をアピールしたい狙いがある。ただ、政府・与党内には慎重な意見もあり、正式な参加表明は先送りする方針だ。

 菅首相は今月1日の所信表明演説でTPPについて「参加を検討」と明言したが、国内農業に打撃を与えるとして農水省、農業団体が抵抗。そのため「農業との両立を図る」ことも明記して農業への配慮を示す。

 基本方針の内容は平野達男副内閣相を中心に外務、農水、経済産業各省の副大臣が調整しており、TPPについては「交渉に参加」とする方向が固まった。菅首相も19日に玄葉光一郎国家戦略担当相から報告を受けた。

 基本方針では、20年をめどに中国やロシアも対象としたアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現を目指すことも盛り込む。米国が前向きなTPPを足がかりとし、米国と連携し中国をけん制する狙いもある。

 TPPを巡っては、産業界にアジア太平洋地域の経済統合の動きから取り残される危機感から参加を望む声が強い。一方、日本への自由化圧力が強まるのは確実で、農業団体や民主党内の反対派議員が警戒を強めている。

 21日には民主党内の反対派が勉強会を設立、国会議員約110人が参加した。小沢一郎元代表に近い有力者が多く、会長に小沢グループの山田正彦前農相、顧問に鳩山由紀夫前首相が就任。鳩山氏は会合で「むやみやたらと関税撤廃からスタートしていいわけではない」と早急な参加に否定的な見解を示した。小沢氏に近いグループは戸別所得補償制度を掲げて農家保護を訴えており、自由化による農家への影響を懸念。積極的な首相支持派と対立する。【小山由宇、大貫智子】

 ◇環太平洋パートナーシップ協定(TPP)◇

 シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国が06年に発効させた貿易・投資などを自由化する経済連携協定(EPA)。発効から原則10年以内にほぼ100%の関税撤廃を目指す。米国、豪州、ベトナムなど5カ国が参加を希望しており、今年3月に計9カ国で新たなTPPの枠組み作りに向けた交渉を開始。11年11月の合意を目指す。

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