2010年10月21日 16時0分 更新:10月21日 23時45分
郵便不正事件に絡む証拠改ざん・隠ぺい事件で、最高検は21日、事件を大阪地検に移送したうえで、前特捜部長の大坪弘道(57)、元副部長の佐賀元明(49)両容疑者を、犯人隠避罪で大阪地裁に起訴した。法務省は同日、2人を懲戒免職処分とした。大坪被告と佐賀被告は起訴内容を全面的に否認しているという。大林宏検事総長は会見で「前代未聞の事態に至り、国民の皆様に深くおわびする」と謝罪した。
事件発覚後初めて会見した大林総長は「検察に対する信頼を回復することが、私に課せられた責務と考えている」と述べ、早期の辞任を否定。証拠改ざんとその隠ぺい事件の背景について「人事の問題や特捜部のあり方を含めて、複合的な要素があったと考えている」と述べた。最高検によると、検察の不祥事で総長が会見するのは、93年のゼネコン汚職事件の捜査における検事の暴行事件と、02年の大阪高検公安部長の詐欺・汚職事件以来3回目。
最高検は証拠隠滅罪で起訴された特捜部元主任検事、前田恒彦被告(43)=懲戒免職=を起訴した際には、動機などを説明していたが、この日は伊藤鉄男次長検事が「被告が否認しているため、極めて少ない情報しか伝えられない」と述べ、起訴内容以外の説明はしなかった。
今後は検事十数人体制で郵便不正事件の捜査や公判、地検や高検、最高検のチェック体制などについて問題点を洗い出し、今年中に検証結果を発表する予定。
前田元検事が東京、大阪の特捜部で捜査を担当した約30件の事件については、関係者の聴取や記録の精査を行い、証拠改ざんの有無も含めて問題点がなかったか確認する。刑事告発も受理しており、前田元検事や検察幹部の刑事責任の有無も捜査するとしている。
最高検は、大坪前部長と佐賀元副部長が今年2月、元検事に改ざんを過失だと説明するよう指示したなどとする容疑で2人を逮捕したが、前部長らが改ざんを知った同僚検事に口止めをしたことや、検事正らに「問題ない」と虚偽の報告をしたことを犯人隠避の実行行為に加えて起訴した。【山本将克、野口由紀】
大坪前部長は21日、接見した弁護士を通じ、「起訴されるのは覚悟していた。裁判で自分の主張を訴えていきたい」との趣旨の話をした。
また、佐賀元副部長の弁護団によると、佐賀元副部長は取り調べで容疑の重要なポイントは「黙秘する」と宣言。公判では、無罪を主張する見通しという。
両弁護団は22日、2人の保釈を大阪地裁に請求する予定。また、懲戒免職処分に対しては近く人事院に不服申し立てをする。
大坪前部長と佐賀元副部長は前田元検事が証拠隠滅の罪を犯した者と知りながら(1)2月1日、犯行を知った同僚検事に他言を禁じ▽2日、前田元検事に電話で過誤による改変と説明するよう指示し▽8日、面前で重ねて指示し▽10日、「過誤で改変」との趣旨の上申書案を了承し、より合理的な説明内容にするよう指示し--捜査を行わなかった。また(2)同月2日、玉井英章次席検事に「証拠品のデータ書き換えだと公判担当検事が問題としたが言いがかりに過ぎず、証拠品が還付され改変の有無を確認できない上、データが変わった可能性があっても確認作業中の過誤に過ぎない」と虚偽報告し▽3日、小林敬検事正に「書き換えだと担当検事が騒いでいるが言いがかりで問題はない」と報告し--捜査は不要と誤信させ捜査を行わないようにさせた。