広島商工会議所の新会頭に深山英樹広島ガス会長が就任した。経済界のリーダーとして地域の元気を引き出してもらいたい。
就任会見で深山会頭は、旧広島市民球場跡地の整備や2013年の全国菓子大博覧会の開催、観光振興を重点課題とした。いずれも行政との連携が成否の鍵を握るといえよう。
2年後、広島市都心部に生まれる約5・5ヘクタールの球場跡地。市の計画では8割を緑地広場とし、イベントなどで「年間150万人の集客」の目標を掲げる。観光交流の一大拠点との位置付けだ。
第1弾として繰り広げるのが菓子博である。商議所は広島県菓子工業組合や県市を交えた準備委員会で基本計画を策定中。業種を超えた波及効果を生み出せるか、手腕が試されることになる。
これを起爆剤として後に続くイベント誘致に結びつけていくことも欠かせない。官民挙げて取り組む態勢づくりが求められる。
地域経済を支える柱の一つになるのが観光振興だろう。滞在型の観光客の呼び込みに力を入れる方針を示したことはうなずける。
広島県の観光客数は08年、5千万人を超えたものの、宿泊客は140万人にとどまる。広島の知名度は高く、中国や韓国など海外から観光客を呼び込む素地は十分にあるはずだ。
既に商議所は県と連携して地元企業が進出している中国・大連からの誘致に乗り出している。自然豊かな瀬戸内海や中国山地を巡るルートなども盛り込んで、新たなモデルに育てたい。
市が招致を検討している20年夏季五輪への対応をめぐっても、難しい判断を迫られることは間違いあるまい。資金調達で経済界に期待する向きもあるだけに、商議所の見解いかんが招致問題の行方を左右する可能性があろう。
基幹産業である自動車産業の回復を受けて、ようやく広島経済は明るさを取り戻しつつある。とはいえ円高やデフレに加え、雇用も改善の兆しが見えにくい。地場企業が先行きへの危機感をぬぐえないのも当然といえる。
会員企業の減少もこうした事情を映しているようだ。ピークだった1994年の1万2千社から現在は9千社余り。入会してもメリットを感じられないとして商議所離れも起きているという。
存在感の低下は、それだけにとどまらない。今回の会頭選びでは「御三家」といわれる広島銀行、中国電力、マツダがそろって辞退。新会頭の任期が始まる11月までに後任が決まらない前代未聞の事態になった。
有力企業に頼ってきた、これまでのようなトップ選びでいいのかどうか。あらためて見直してみてもいいのではないか。
来年創立120周年を迎える商議所。転機はチャンスでもある。「前例にとらわれない」「知恵と力を結集して取り組む」との会頭の言葉は頼もしい。広島への熱い思いを、地域経済の振興につなげてほしい。
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