上級  かたんべべ  肩車(かたぐるま)
他語 カタウマ  カタクマ  カタゴンゴン  カタベベ  カタベンベン  カタンクマ  カタンゴ  カタンゴンゴ  カタンゴンゴン  カタンベエ  カタンベンベン  カッタンゴンゴン  カッタンベンベン  ベベンカタ  ベベンコ  ベベンチョコ  
用例 「はいきない、かたんべべしてやろう」{はやくおいで、肩車をしてあげよう}
他地 九州各地での言い方・・・下記「九州肩車地図をながめる」

中国・四国
での代表的な言い方・・・
かこぐま(広島県因島)かたきんば(愛媛県新居浜)かたくんぼ(愛媛県松山)きんくりまた(広島県大竹)くびんま(徳島県西祖谷山)くびきんま(高知県南国)さかくま(岡山県邑久)じんじくま(愛媛県今治)ちゃんちゃんぐるま(愛媛県伊方)ちょうさ(広島県江田島)(愛媛県中島)ちょうまつ(愛媛県中島)ちんかんべえ・てんかち(愛媛県波方)ちんかんもんもん(広島県吉和)ちんちんかっか(広島県安芸津)ちんちんだいぼ(島根県平田)つべこま(愛媛県吉海)(広島県因島)てんぐりまんぐり(山口県豊浦)てんぐるさ(広島県世羅)てんぐるさん(広島県神石)(岡山県久米)てんてこ(広島県大崎)どどくま(香川県直島)どーろっきゃー(広島県向島)なっぱいど(香川県満濃)なっぽん・のっぽん(香川県坂出)びくのたに・びんびんどう(岡山県大竹)びくまん(広島県大朝)びんぐり(広島県能美)びんびく(山口県下関)びんびくま(山口県萩)びんびんかっこ・ぶんぶんく(広島県加計)びんびんこいご(島根県金城)びんぼこ(山口県光)ぶんぶくちゃがま(鳥取県倉吉)べべくま(山口県阿東)べべこま(愛媛県朝倉)またきんば(香川県庵治)みんみんかんご(島根県三隅)


ながれかんじょ
・・・打上げ場所が観覧場所のそばにある(ので)、風が吹いたらけぶか(煙たい)、けぶか。真上を見上げて首はだーい(だるい)。かたんべべされたやや(幼児)ん首もだーい。首のこわる(凝る)。・・・
                                                  
                                    方言ポエム「かたんべべ」子どもどんの四季


       九州肩車地図をながめる・・・
                    キーワード別・県別

      ※各県での肩車の言い方は、現在使われなくなった言い方を含んでいる。
      また、そのいずれかを使い又は使っていた市町村名を下に掲げた。
      ただし、ここに示している方言は、一部であって全てではない。

肩車の転語

  【福岡県】
   かたくま かたうま かたんま かたくんま かたんま
   福岡・春日・大野城・太宰府・古賀・山田・甘木・篠栗・新宮・福間・津屋崎・桂川・碓井・嘉穂
    ・筑穂
  【佐賀県】
   かたうま かたんしゃ かたんちょ かたんま かっちゃぐるま
   佐賀・多久・諸富・川副・神崎・三田川
  【長崎県】
   かたうま かたのせ かたのりぼんさん かたまんじゅう かたんま
   平戸・松浦・佐世保・生月・鹿町・小佐々・鷹嶋・江迎・世知原・川棚・波佐見・国見・崎戸・愛野
    ・小浜
  【大分県】
   かたうま かたくび かたくま かたくも かたぐるめ
   中津・臼杵
  【熊本県】
   かたくらげ かたほいほい かたんぐら
   八代・本渡・鏡
  【宮崎県】
   かたぐいま かたんま かたんのすい
   野尻・五ヶ瀬・高千穂
  【鹿児島県】
   かたぐいま かたぐぃま
   串木野・菱刈・霧島・佐多・山川

    大言海
       肩車・・・乗ル故ニ車ト云フ
       かたくび・・・かたぐるまの古語
       かたぐま・・・肩車の略
     日本国語大辞典
       肩車・・・肩駒(かたこま) かたくま 肩継(かたつぎ)
     義經記
       「彌陀王トテ名誉ノ兒アリ、花折リテ出デタタセ、若大衆ノカタクビニ乗リテゾ來リケル」

肩(かた)

  【福岡県】
   かった がった がったん がっち がっちゃん がっちょ がっちょん がってん がっくん
   →畳語の後につく
     じょんじょんがった じょんじょんがったん じょんじょんがっち じょんじょんがっちょ
     じょんじょんがってん でんでんがったん でんでんがっちゃん でんでんがっちょ
     どんどんがっちょ じぇんじぇんがっくん じょんじょんがっくん
     大牟田・久留米・柳川・大川・八女・筑後・小郡・北野・大刀洗・大木・黒木・上陽・立花
      ・広川・矢部・星野・瀬高・大和・三橋・高田・三潴
  
→畳語が後につく
     かったんごんごん かったんべんべん
     甘木
   →その他
     とんからがっちょん ひゅーどんがっちょ
     上陽・矢部
  【佐賀県】
   かちゃ かった かっちゃ がっちゃ ちゃちゃ
   →かちゃんごんご かったんごんご かっちゃぐるま ちゃちゃんくび どんがらがっちゃ
     びーびーがっちゃ
     鳥栖・唐津・多久・基山・厳木・相知・太良
  【長崎県】
   かて
   →かてーのばし
     三和

  【熊本県】
  かちゃ
   →びびんかちゃ べべんかちゃ
   旭志・西原・矢部・菊陽

び びび びん
   鬢(びん)・・・「びんた」「頬」「頭」を意味している。鹿児島県の広い地域で頭をビンタと言う。
            肩車をされた幼児が、肩車をしている大人の鬢、頬、頭をつかみ、引っぱり、支
            えとする。
            その姿のままを言うものびんびき(鬢引き)・びんびく(鬢引く)
                              北九州 大分県姫島・上浦 広島県大野 
                             山口県各地 島根県津和野・匹見・六日市
   
「び」「びび」「びん」は鹿児島県→宮崎県→大分県東部→福岡県東部→山口県にと
     
広がりをみせている。
 【福岡県】
   べびんこ びびんかた びびんこ びびんちょ びびんちょこ びんびき びんびんこ
   北九州・行橋・中間・岡垣・吉井・田主丸・浮羽・香春・苅田・吉富・大平
  【長崎県】
   びんび びんびくま びんびこ
   福江・宇久・富江
  【大分県】
   びく びっくり びびく びびくに びびくみ びびくり びびくん びびこ びーびこ びびこん
   びびたご びびっくり びびっこ びびんこ びびんくび びんこ びんこしゃん びんびき
   びんびくま びんびこ びんびく びんひゃら びんびんこ
   大分・中津・佐伯・竹田・豊後高田・杵築・宇佐・津久見・国見・姫島・大田・香々地・国東・日出
    ・山香・庄内・湯布院・佐賀関・上浦・弥生・宇目・三重・清川・大野・犬飼・九重・本匠・武蔵・
    耶馬渓・久住・朝地・野津
  【熊本県】
   びびひょろんげ びびひょろんこ びびんかちゃ びびんこ びびんちゃん びびんちゃんこ
   びびんちょ びびんちょこ びんちょこ
   山鹿・鹿北・合志・旭志・産山・高森・久木野・長陽・西原・清和・多良木・湯前・菊陽・蘇陽
  【宮崎県】
   びごびん びっちゃんこ びーびーこい びびんかた びびんこ びびんしゃんこ びんかた
   びんずい びんずいこ びんずんこっこ びんた びんちょこ びんびらこん
   宮崎・都城・日南・小林・日向・串間・西都・えびの・清武・田野・佐土原・北郷・南郷(町・ 村)
    ・高城・高崎・高原・野尻・須木・高岡・国富・綾・木城・川南・都農・椎葉・五ヶ瀬
  【鹿児島県】
   びっつんこ びびっちゃん びびっちゃんこ びびんかっこ びびんこ びーびんこ
   びーびんこー びびんしょ びびんちっこ びびんちゃんこ びりんこ びんこ びんずい
   びんずいこ びんずっこ びんちょろ びんびらこ びんびんこ びんびんこっこ
   鹿児島・川内・鹿屋・串木野・大口・指宿・国分・西之表・垂水・鶴田・東郷・吉田・桜島・川辺
    ・知覧・喜入・坊津・東市来・郡山・日吉・吹上・入来・宮之城・薩摩・祁答院・加治木・姶良・
    蒲生・溝辺・栗野・牧園 ・霧島・隼人・福山・大隅・輝北・吉松・財部・末吉・志布志・大崎・
    串良・東串良・内之浦・高山・大根占・根占・田代・佐多・中種子・上屋久
    ※びんずい→薩摩地方   びびんこ→大隅地方
    ※鹿児島弁で「〜まで行く」を「〜ずい」。また、「ずいこ」は背負う意。


べ べべ べん
   べべ=赤・紅(べに・べん)=着物=幼児
        「紅を略して重ねたる語。衣服(きもの)。小児は視覚徴なれば、単純な赤色などを好
       みて、闇色を喜ばず、足利時代中期の福富の草紙に小袖をべべと見えたり。又、べん
       べ。おべべ。」大言海
        「赤きべべかと見しは、頭(つぶり)にあへし血なりけり」福富長者物語
        「関東関西トモニ、ベベトイフハ、小児ノ衣服ノ事ナリ」望春随筆

       望春随筆(ぼうしゅんずいひつ)
           平田孫右衛門(秋月藩勘定奉行など歴任)が天保5年(1834)に完成させた。
           全5巻。巻5に当時の秋月の方言が収集、解説されている

       「小児は赤き物をよろこぶ故赤き物を紅々(ベニベニ)と云いて喜ばせ、赤き着物を
       ベニベニと習はせし」望春随筆
        「紅ノ転化故ニ総テ紅色モノヲ斯ク呼ブ」福岡県内方言集(明治32年福岡県教育会本
        部編纂)
        久留米・八女・長崎県生月で「血」をべんべん(幼児語)と言う。
     べべ=「びび」の転
           「ひ」と「へ」の同一化例→ひご(へご)ひげん(へげん)ひごる(へごる)えびす
                         (えべす)ひねる(へねる)かたひら(かたへら)
                         びちゃびちゃ(べちゃべちゃ)
          「べべ 美美の転語」望春随筆
          長崎県対馬では、浜辺の美しい小石を美美石(べべいし)と言う。
          「べ」「び」の混合地北九州(びびんこ・びんびき・べべんこ・べびんこ)
                         行橋・香春・苅田(びびんこ・べべんこ)浮羽郡(びびんちょこ
                       ・べべんちょ)吉富(びんびんこ・べんべんこ)

  【福岡県】
   かたべべ かたべんべん かたんべえ かたんべべ かたんべんべん かったんべんべん
   べびんこ  べべんかた べべんこ べべんちょ べべんちょこ べんべんこ
   北九州・久留米・田川・甘木・行橋・豊前・水巻・鞍手・嘉穂・夜須・朝倉・三輪・杷木・小石原
    ・宝珠山・吉井・田主丸・浮羽・香春・添田・赤・苅田・犀川・勝山・豊津・椎田・吉富・築城
  【佐賀県】
   べべんこ
   鳥栖(田代)
  【長崎県】
   べべんこ べんべこ
   福江・玉之浦
  【大分県】
   べべんこ べべんくび べべんくり べべんちょ べべんちょこ べんべんこ
   中津・日田・宇佐・中津江・上津江・大山・天瀬・三光・山国・安心院
  【熊本県】
   べべかちゃ べべんちょ べべんちょこ べんちょこ
   一の宮・小国・矢部・蘇陽

  【宮崎県】
   べべんちょこ
   西都

こ ちょ  ちょこ
   ○○の子(子供)=○○んこ=○○んちょ・んちょこ
       小さなものを表す幼児語・愛称。また、ちょこんと留まったり、くっついた様子。
       えびんちょ(小エビ)がらんちょ・こまんちょ・くまんちょ(あぶらゼミ)
       おんちょ・めんちょ(動物の子の雄雌)かぎんちょ(鍵)がきんちょ(子供)など
  【福岡県】
   じょんじょんがっちょ でんでんがっちょ どんどんがっちょ ひゅーどんがっちょ びびんこ
   びびんちょ びびんちょこ びんびんこ べびんこ べべんこ べべんちょ べべんちょこ
   べんべんこ
   北九州・中間・田川・行橋・豊前・大牟田・久留米・柳川・大川・甘木・朝倉・杷木・宝珠山・
    浮羽郡・上陽・立花・広川・星野・瀬高・大和・三橋・高田・苅田・岡垣・香春・大平・吉富・
   椎田・水巻・鞍手・赤・築城・豊津・添田・犀川・勝山
  【佐賀県】
   かたんちょ べべんこ
   鳥栖(田代)・諸富・川副・神崎・三田川
  【長崎県】
   せんだいろっこ びんびこ べべんこ べんべこ
   島原・福江・宇久・玉之浦
  【大分県】
   びびこ びーびこ びびっこ びびんこ びんこ びんびこ びんびんこ べべんこ べべんちょ
   べべんちょこ べんべんこ 
   大分・中津・日田・佐伯・竹田・豊後高田・杵築・宇佐・大田・香々地・国見・国東・日出・山香・
   庄内 ・湯布院・弥生・久住・朝地・野津・宇目・大野・犬飼・九重・本匠・中津江・上津江・大山・
   天瀬・三光 ・山国

  【熊本県】
   ちびんこ ちびんちょ びびひょろんこ びびんこ びびんちゃんこ びびんちょ びびんちょこ
   びんちょこ べべんちょ べべんちょこ べんちょこ
   一の宮・小国・産山・高森・清和・多良木・湯前・鹿北・久木野・長陽・蘇陽
  【鹿児島県】
   じゃんじゃんこ ずすかんこ ずっかんこ びっつんこ びびっちゃんこ びびんこ びーびんこ
   びーびんこー びびんちっこ びびんちゃんこ びんこ びんずいこ びんずっこ びんびらこ
   びんびんこ びりんこ
    鹿児島・鹿屋・串木野・出水・加世田・国分・西之表・垂水・吉田・桜島・川辺・知覧・喜入・
   東市来・郡山・日吉・吹上・入来・野田・東・宮之城・東郷・薩摩・加治木・姶良・栗野・牧園・
   霧島・隼人・福山・大隅・輝北・吉松・財部・末吉・志布志・大崎・串良・東串良・内之浦・高山・
   大根占・根占・田代・佐多・中種子・南種子・上屋久

祭り
  (1) 風流(浮立)  くんち  祗園囃子(山笠) 小幟楽(このぼりがく)の  鉦・笛・太鼓の音
        鉦・・・「きゃんきゃん」「かんかん」など
        笛・・・「ひゅー」「ぴーひょろ」「ひょろ」など
        太鼓・・「でんでん」「どんどん」など
     
    肩車の親子の姿を山笠の△形に見立てる。
    吉井祗園囃子 山笠の台組の下にもぐり込んで、横笛・三味線・太鼓が合奏される。山笠全
              体が音を出している(ヒュードンドン)かのような情感が伝わる。
    
    肩車の親子の姿を風流(浮流)、くんち、小幟楽の出し物の形に見立てる。
     長崎くんち   思い思いの意匠をこらした大きな指し物を頭上高くかかげ、背に母衣(ほろ)
              をかけ、キャンキャンと鉦(かね)を叩いて踊る。そこで子供を肩車に乗せる
             と、 頭上の子供が指し物に相当し、子供の着物の下部が母衣に 相当する。
              頭に重いものを乗せてキャンキャンとはやすから、頭(ず) キャンキャン。
              (勝山町の大薩摩興善町小薩摩)「ばってん帳」(長崎新聞社 松浦直治著)
    小幟楽  鹿児島県出水市武本
              背中に鳴り物の鉦を背負い、肩には被い物のスゲ笠の縁まわりに半紙で切
              った御幣を隙間なくはりかぶったとき顔が見えないほど垂れ下げる。
              背中に長さ十尺程のカラ竹で作った幟を背負い、胸には太鼓を抱くように結
              びつけ、ズッカンカン、ズッカンカンの拍子・囃子・鉦の調子にのって飛んだ
              り跳ねたりする。(「出水の生活伝承」出水市教育委員会)
           鹿児島県高尾野「山田楽」
              かすりの着物を着流し、頭には白い幣紙をまわりに垂れた「ちろり笠」 をか
              ぶる。太鼓打ちは、かすりの着物にたすきをかけ、太鼓を胸に吊し、 頭に「
              毛笠」をかぶる。
              笹払いといって、背にちろりをつけた笹の枝を高く背負い、小太鼓を前に吊し
              て10数人が踊る。踊りの所作は、戦陣の姿を表し、出征とがいせんの形を太
              鼓踊りに編んだ。


   参考  ◇今古賀風流どんきゃんきゃん(三橋)◇広田八幡神社神幸どんきゃんきゃん
            (瀬高)◇水田天満宮稚児風流どんかんかん(筑後)◇福島燈籠祭ちゃっぽん
            ぽん(八女)◇松尾弁財天祭(立花)◇八女津媛神社浮流(矢部)◇田代風流(
            黒木)◇風流はんや舞(星野)◇荒穂神社御神幸祭どんきゃんきゃん(佐賀県基
            山)◇五馬市くにち楽(大分県天ヶ瀬)◇曾根崎・牛原・藤木の獅子舞(佐賀県
            鳥栖)→ 鉦・太鼓の伴奏で2人の獅子釣り童子が操る。◇脇本の山田楽(鹿児
            島県阿久根市)→冥八(シンバルのような楽器)・鉦・大小太鼓◇青木の山田楽
            (鹿児島県野田町)◇東郷の山田楽鬼神舞(鹿児島県東郷町)


     山田楽
     〔阿久根市脇本小学校のホームページ〕
     http://www.minc.ne.jp/~megumi-t/yamada.htm

  【福岡県】
   でんでん でんでんがったん でんでんがっちゃん でんでんがっちょ とんからがっちょん
   どんどんがっちょ ひゅーでんこ ひゅーでんでこ ひゅーどんこ ひゅーどんどん
   ひゅーどんがっちょ ひゅーどんこ ひゅーひゅーどんどん
   大牟田・柳川・大川・黒木・上陽・立花・矢部・星野・瀬高・大和・三橋・山川・高田
  【佐賀県】
   かんちょかん ちんかんかん どんがらがっちゃ びーびーがっちゃ
   鳥栖・三根
  【長崎県】
   うっきゃんきゃん じっきゃんきゃん ずっきゃんきゃん ずんきゃきゃきゃん
   ちーかんだんぶー ちょっかんまんどー ちんかん ちんがんがん ちんとんかめ
   ちんとんがんがん ちんとんかんめ ちんちん ちんちんがんがん ちんとんとん
   ちんよろ とっかんかん とっかんがん とっかんご とっきゃんきゃん とろんきゃんきゃん
   ひゅーがんがん ひゅーとことん ひゅーどんどん  ひゅーりがんがん
   長崎・佐世保・諫早・大村・飯盛・東彼杵・波佐見・外海・長与・多良見・三和・奈留・勝本・
    郷ノ浦・石田・芦辺・高島(端島)
   
※ズッキャンキャンは、長崎方言の横綱格。
  【大分県】
   ひゅーひゅーどんどん
   大山

  【熊本県】
   おっぴひょろ おっびひょろろ おっぴよろ おっぴんよろ おっぺひょろ ずすかんかん
   ずんかんかん ずんずんかんかん ちーひょろ つんつんかんかん どすかんかん
   どんかんかん びびひょろんげ  びびひょろんこ  ひゅーひゅーとんが
   水俣・山鹿・菊池・七城町・西合志・菊鹿・鹿本・鹿北・菊鹿・一の宮・波野・田浦・芦北・津奈木
   ※韓国語で「肩」はオッケ。
   ※四国地方では、おんぶのことをオッパと言う。
  【宮崎県】
   きんかんなんぼ たかぴっぴ ちゃんぽんぽん ちんかんなんぼ ちんかんぽんぽん
   ちんかんまんだ
   西郷・諸塚・高千穂・日之影
  【鹿児島県】
   ずしかんかん ずすかんかん ずすかんこ ずっかんかん ずっかんこ ずっけんかん
   出水・加世田・高尾野・野田・笠沙

  (2) 御神輿(おみこし) → 担ぐときの掛け声。                       
   雲仙地方・・・御神輿の前を担ぐ者は「せんざーらく」と、後を担ぐ者は「まんざーらく」と言っ
             て、千年万年の豊作を祈願する。千年も万年も楽なように。

  【長崎県】
   せんだいまんだい せんだいろっこ せんだらっこ へんだらっく へんだらっこ へんだろう
    島原・加津佐・布津・小浜・有家・西有家
   ※宮崎県北浦で、せんちょまいこ。
  【熊本県】
   とんかかん とんかちっち とんちかっか
   苓北
   ※どすかんかん・どんかんかん も御神輿からきたか。

   
※中国四国の瀬戸内海沿岸地方の一部では、ちょうさ祭りからきた「ちょうさ」の言い方があ
     る。

   ※福井県若狭地方には、神楽(かぐら)に由来する「ししのらんぎょく」(獅子の乱曲)の言い方
     や、祭りの御輿かつぎの掛け声「さいよれー」「ちょーさいと」、御輿そのものの「みこしさん」
     の言い方がある。
   ※石川県能登地方には、祭囃子の鉦、太鼓に由来する「ちゃんかちゃんか」「でんこでん」や、
     祭囃子の掛け声「いやさかさっさ」、御輿かつぎの囃子詞「ちょーさよーさ」「まーまんど」、
     御輿そのものの「みこしさん」の言い方がある。
   ※石川県や富山県には「なんまいだ」「なんまんだぶつ」「なんなん(仏様)ぼんぼ」と仏様を連
     想させるもがあるが、神事の獅子舞で棒振りが肩車される姿からきている。
     長野県にも「ちんなまんだ」というのがある。長崎県西海にも「なまいだ」「なーまいだ」の言
     い方がある。
      →祭りで稚児が肩車される神事は各地に現存する。尾張津島天王稚児打ち廻し・京都松
       尾大社御田祭・越中加茂神社稚児舞・三条八幡宮舞い込み・遠州森の祭り舞児還し・青
       田の神楽背継
   ※新潟県村上には、祭りの囃子からきたとされる「ちゃんちゃんじきじん」の言い方がある。
    
じょん

   じょん=子供    主に男の子に対して称する。最近は聞かれなくなった言葉。 
                愛媛の伊予地方など一部では女の子に対して称する。
                また、幼児の頭などを撫でて可愛がるときのかけことばでもある。
                幼児は、犬などの頭を「じょんじょん」と言って撫でる。
                ※じょんこ・・・お嬢様(徳島阿波地方)よい子(茨城北相馬地方・千葉県東
                       葛飾地方・茨城県猿島)
  【福岡県】
   じぇんじぇん じゅんじゅん じょんじょん じんじん
   → 後に「かた」の転語や「おんぶ・だっこ」の転語がつく。
      じぇんじぇんがっくん じゅんじゅんがっこ じょんじょんがっくん じょんじょんがっこ
      じょんじょんがった じょんじょんがったん じょんじょんがっち じょんじょんがっちょ
      じょんじょんがってん じょんじょんごっこ じんじんごっこ
      久留米・大川・柳川・筑後・小郡・立花・広川・大木・瀬高・三潴・黒木・北野・大刀洗

ちち ちん

   股を広げた幼児(着物姿)のおちんこが、肩車をした父親の後首に触る。
  【福岡県】
   ちちかた ちんかた ちんちんかた
   直方・赤池・方城
  【熊本県】
   たかちん たっかちんちん ちーかた ちーひょろ ちんちんかっぷ
   菊池・一の宮・波野・多良木・五和
  【鹿児島県】
   ちんちんかっこ ちんちんこめ
   金峰・大浦

ご ごんご ごんごん

    ごんごん=乳母車・おんぶ
             ※こんご(鹿児島:ねんねこ半纏) ごんご(佐賀:ねんね)
  【福岡県】
   かたんご かたごんご かたごんごん かたんごんごん かったんごんごん
   大牟田・甘木・柳川・高田・立花・三橋
  【佐賀県】
   かったんごんご かちゃんごんご
   唐津・厳木・相知・太良
  【長崎県】
   かたごんごん かたんごんごん
   諫早・高来
  【熊本県】
   かたんご
   玉名

てんぐるま

    手車・・・幼児の両足を両手で持つと、手押し車を立てた形になる。
          肩駒+手車=肩車(かたぐるま)  「天車」ではなさそう。
     
「てんぐるま」は、全国に散在する。
  【佐賀県】
   肥前
   転語:てんてんぐるま(厳木)
  【長崎県】
   厳原・美津島・豊玉・峰・上県・上対馬
   転語:けんぐるま(厳原)てんぐ(佐世保)てんくび(上対馬)てんくま(上県・厳原)
       てんぐる(厳原)
  【大分県】
   九重・玖珠・大山・天瀬・本耶馬渓
  【熊本県】
   南関・矢部
  【宮崎県】
   延岡・高鍋・西米良・門川・東郷・南郷(村)・西郷・北郷・北方・北川・日之影
   転語:てんごまんま(西郷)てんじんばんじん(諸塚)てんてん・てんてんぽっぽ・てんぱっぱ
        (高千穂)
  【鹿児島県】
   転語:てんぐいま・てんまんこ(笠沙)てんぐらめ(阿久根)てんてんぐいま(頴娃町)
       てんてんこつ(枕崎)

おんぶ・だっこ

  【福岡県】
   がっこ ごっこ
   →じゅんじゅんがっこ じょんじょんがっこ じょんじょんごっこ じんじんごっこ
     久留米・広川・北野
  【大分県】
   かっか かっこ かんげ
   → さるかっか さるかっこ さるかんげ
      蒲江
  【熊本県】
   かっか かっぷ
   →ちんちんかっぷ とんちかっか
     五和・苓北
  【宮崎県】
   かっか くわっきゃー
   → どんかっか さるまたくわっきゃー
     諸塚
  【鹿児島県】
   かっこ こっこ
   金峰・吹上
   →ちんちんかっこ びびんかっこ びんびんこっこ
  ※かっかい→「だっこ」の意(鹿児島県大崎)
  ※かいかい→「おんぶ」の意(熊本県長洲・天水)
  ※おっぱ・ぱっぱ→「おんぶ」「背負う」の意(徳島県・愛媛県・香川県)

さる

    猿・・・「さる」のついたものは、概して個性的。
        さるのめんげたい(長崎県野母崎)さるまたくわっきゃー(宮崎県諸塚)さるこばっぱ
       (岩手県和賀)さるぼんぼ(富山県礪波・石川県河北)
  【長崎県】
   さる さん
   →おさるがめんだる さいよめんだる さるがめんだり さるのめんげたい さるのめんだる
     さるのめんどり さるまわし さるまんだ さんがんめんだ さんだめんだる さんまんだ
     さんめんだ
     川棚・琴海・西海・野母崎・三和・有川
  【大分県】
   さるかっか さるかっこ さるかんげ
   蒲江
  【宮崎県】
   さるまたくわっきゃー
   諸塚


くび

  【佐賀県】
   ちゃちゃんくび
   基山
  【長崎県】
   てんくび
   上対馬
   【大分県】
    く くに くび くみ くり くん
   →くびえま かたくび べべんくび  びく びびく びびくに びびくみ びびくり びびくん
     びびっくり びっくり
     大分・中津・臼杵・津久見・杵築・武蔵・日出・佐賀関・犬飼・弥生・野津・三重・清川・九重
     ・安心院

ちゃん ちゃんこ

   ちゃんこ・・・座る(幼児語)
  【熊本県】
   びびんちゃん びびんちゃんこ
    高森・久木野・長陽

高(たか)
  【長崎県】
   たかうま たかんま
   小佐々・吉井
  【熊本県】
   たかたん たかちん たっかちんちん
   人吉・菊池・多良木

  【宮崎県】
 
たかぴっぴ
   諸塚


その他

  【佐賀県】
   猿?       :さんごさんご(鎮西)
             ※サン→サル
  【長崎県】
   馬        :うまきんきん(上五島・新魚目)おんまちょいちょい(勝本)うまはいはい(小値
             賀)うまのり・うまこのり(奈良尾)
   高        :てんがいてんがい(三和)→タカイタカイ?
   猿?       :さあこっけえ・さいもんど(外海)さんごさんご(西海)
             ※サア・サイ・サン→サル
   祭?       :とっかいご(大村・時津)とっかいぼ(大村)なまいだ・なーまいだ(西海)
   蛙?      :どんくんさん(大瀬戸)どんびい・どんびいろーろー(崎戸)
            ※蟾蜍(ひきがえる)→わっくーどんくー(西彼杵)しょーくわどんくー(外海)
   他        :しゅうたんぼ(厳原)ちゃんどろい(大島村)ちょんがら(奈留)ちろろ(三井楽)
  【熊本県】
   木馬(きんま):きんまじょ(八代)
            ※八代神社(旧妙見宮)祭礼神幸行列の中に、木馬(きんま)という張子の馬の
              胴の部分に子供が入るものがある。掛声の「キンマジヨ」は、木馬に乗ること
             であるが、八代方言は肩馬(肩車)することをキンマジョと言う。(「夜豆志呂」
             八代史談会刊:津田喜一)
   掛け声     :よいや(牛深)
   他        :じーじーかんのんさん(天草)しっかとせ・せっかとせ(一の宮・阿蘇)とこせい
             (益城)ちょん(岡原)まんまんがら(松島)
  【宮崎県】
   馬        :まのり(椎葉)うまぐるま(椎葉・日向)
   他       :かんぎ・おんぶり・せんちょまいこ(北浦)
  【鹿児島県】
   掛け声    :しょっしょ・しょっしょい(川辺)
   他       :しゃんしゃんかた(阿久根)じゃんじゃんこ・あごじゃんじゃん(東)
            あおじゃんじゃん(長島)ちぇんちぇんくつ(知覧)ちょぴん(上屋久)
            あたまんじ ゅうろう(里)たんこのこーえー(上甑)
            ※シャンシャン・ジャンジャン・チェンチェン→ 祭りの「冥八」(シンバルのような楽
             器)の音?

            以上、九州各地での肩車の言い方をキーワード(語源と考えられるもの)ごとに紹介し
             たが、現在はいずれの地域においても「
かたぐるま」の共通語に統一されつつある。
              幼児の数が激減していること(少子化)と、父親が肩車をしなくなったことも、このことに
             拍車をかけているのだろう。
                また、調査した限りでは、九州で
300を超える種類もの言い方が存在する(した)こと
             が分かったが、この数は、中国・四国地方と比肩できない。(下表)
               なぜこんなに多いのかは見当がつかない。ただ、子を想う親の情が、九州では一段と
             熱いのではと・・・そんな気にもさせられる。

  
  種類数の西日本各県比較は次のとおり。(2県以上に共通する語を含む)
  【九州地方】合計322。長崎県の79種類には驚かされる。

  【中国地方】合計88                   【四国地方】合計35

              しかし、若狭、能登一帯では、九州を上回る多くの言い方が存在する(存在した)。
            福井県(藤本良致氏採集)では143種、石川県(馬場宏氏採集)では約200種と、
            けた違いに多い。(「福井県のかたぐるま(肩車)方言」藤本良致・「能登の方言」馬場宏)