韓国軍は20日午前、南北朝鮮の国境付近の延坪島(ヨンピョンド)など5島の住民に、避難を命じた。軍は射撃訓練の2時間前に避難を命じることになっている。
報道によると、訓練は現地時間午前11時から正午の間に行われる見通し。
韓国が黄海での実弾射撃訓練を計画していることを受け、19日に国連安全保障理事会(安保理)の緊急会合が開かれた。ロシア、中国両政府による中止要請が、韓国の圧力となっていることをうかがわせる動きだ。
今回の訓練は、韓国にとって綱渡りだ。交戦となれば、国民の安全や経済が脅かされる。
韓国の国防当局者らは19日、計画されている訓練について、「通常かつ正当」だと述べた。韓国軍合同参謀本部のスポークスマンは「実弾演習の実施前に北朝鮮の脅威や外交情勢は考慮に入れない。天候が許せば予定通り行う」としている。
ただ、週末の韓国国内にはほとんど緊張の兆しはない。休暇シーズンを控えたショッピングモールは混み合い、道路は田舎や都会を目指す人でいっぱいだ。
国際危機グループ(ICG)のアナリスト、ダン・ピンクストン氏(在ソウル)は19日、「情報に通じた上で心配していないように見える人がここには多くいる」と指摘している。
一方の北朝鮮では、通常と異なる軍部の動きや戦争に向けた準備の兆候はないと同国軍事偵察関係筋は語った。同国は17日以来、韓国が訓練を実施すれば報復すると何度か警告しているが、どれも金正日総書記に関連した機関ではなく、比較的低レベルの機関から発せられたものだという。
米当局者は、北朝鮮が今度の韓国軍の訓練を脅威とみるべきでないと語った。日本の四方敬之内閣副広報官は、外交に関する議論へのコメントを避けつつも、訓練が日本政府の支持を受けていると述べた。
一方、中国とロシアは自制を訴えている。ロシアのチュルキン国連大使は18日、記者団に対し、「この状況は、ロシア連邦の国家安全保障上の利益に直接影響する」と述べた。
中国外務省の声明によると、同国の楊潔篪(ヨウケツチ)外相とロシアのラブロフ外相は18日に電話で協議した。両相とも自制を求めたという。楊外相は「中国は、緊張を招き、状況を悪化させる行動に断固反対する」と訴えた。
国連安保理は19日、ロシアの要請を受け緊急会議を開いた。ウォール・ストリート・ジャーナルが確認した声明文草稿でロシアは、「当事者がみな最大限に自制し、(一帯の緊張をさらに高めかねない)手段を執ることを避ける」よう訴えている。同国は17日に、韓国に訓練中止を要請していた。
しかし韓国はあくまでも、米国の全面的な支援を受けた訓練を実施する方針だ。
ロシアは草稿で、「朝鮮半島における現在の危機的状況を平和的に解決する緊急策について相談するため」、国連の潘基文事務総長が韓国と北朝鮮に特別大使を「滞りなく派遣」するよう求めている。
18日には中国の張志軍筆頭外務次官が、両国に自制を求めるよう自国が「絶え間ない努力」をしていると強調した。中国外務省のウェブサイト上の声明によると、同次官は中国が「最近」北朝鮮と韓国の大使を呼び出したと述べたという。ただ、時期は特定していない。
韓国は、訓練に対して北朝鮮が何もしないと読んでいるが、慎重に事を進めている。攻撃の1週間後に訓練を行う計画を立てたこともあったが、壊れた施設を修復し、複数のロケット発射装置などで軍備を増強した。16日には、18日にも訓練を実施するとしていたが、天候を理由に延期している。
ピンクストン氏は、延期によって韓国軍は、北朝鮮が次の攻撃の準備をしているかどうか観察する機会を得たと述べた。ただ、北朝鮮が直ちに反応する、あるいは延坪島攻撃と同じ作戦を使うとは限らないという。
米兵約20人などからなる国連軍は、今回の訓練を監視する。