【ソウル西脇真一】韓国軍は20日にも黄海の延坪島(ヨンピョンド)周辺で海上射撃訓練を実施する。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は19日、訓練が実施された場合は「どのような事態になるかは明白だ」と警告する論評を掲載した。しかし、韓国国防省は「北の脅迫と強引な主張にいちいち対応する必要はない」と予定通り実施する方針で、朝鮮半島は再び緊張が高まっている。
韓国軍は先に18~21日のいずれかに気象条件などが良い1日を選んで訓練を実施すると発表したが、18、19日は悪天候を理由に見送った。合同参謀本部によると、20日にも実施される訓練で、延坪島の海兵隊は島の南西に設定した海域に向けてK9自走砲などを発射する計画。また在韓米軍約20人が参加して通信、医療の支援にあたるほか、在韓国連軍代表も参観する予定だ。
北朝鮮は99年に黄海上の南北境界「北方限界線」(NLL)の無効を主張し、NLLの南方に海上軍事境界線を独自に設定。訓練海域はこの境界線内に含まれるため、北朝鮮は「領海内」であることを理由に訓練の中止を要求。「強行した場合は2次、3次の予想できない打撃が加えられる」と警告する通知文を17日、韓国側に送付した。
11月23日の延坪島に対する北朝鮮の砲撃の際は、直前まで韓国の海兵隊が海上に向けた射撃訓練を実施。同日朝には、北朝鮮が韓国に中止要請文を送っていた。
砲撃事件では、海兵隊員2人と海兵隊官舎を建設中の作業員2人の計4人が死亡。軍施設のほか島の多数の住宅が砲弾の直撃を受け、炎上するなどの被害が出た。
事件を受けた国民向けの談話で、李明博(イミョンバク)大統領は「今後の挑発に対しては、必ず応分の対価を支払わせる」と警告。韓国軍は攻撃起点の空爆も辞さない構えを見せている。
毎日新聞 2010年12月20日 東京朝刊