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経済で戦争は防げるか――『The Costs of Conflict』

提供:リアリズムと防衛を学ぶ

The Costs Of Conflict: The Impact On China Of A Future War
The Costs Of Conflict: The Impact On China Of A Future War
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 本書、「紛争の代価(THE COSTS OF CONFLICT)」は、台湾有事について主にコストの側面から分析した論文集です。戦争のコスト、つまり貿易の一時途絶や、国際社会からの孤立といった代価を払ってでも、中国は台湾侵攻に踏み切るのでしょうか? それとも、経済的な相互依存が著しく進んだ今日、台湾有事が起こりうるなど時代遅れの幻想に過ぎないのでしょうか。

 本書の結論は明快です。
中国は台湾に武力を行使しないだろうと広く信じられている。……その見方の一つは「中国は経済的に失うものが多すぎて、台湾をめぐる戦争のリスクを冒せない」という前提に基づいている。

……クエスチョンは「中国はどんな経済的帰結を招こうがお構いなしに、一定の条件下では台湾に武力を行使するか?」である。フリードマンによれば、答えは「間違いなく、行使する」だ。本書の筆者たちを含め、多くの専門家たちがこの判断に同意するだろう。

……国家安全保障上の重要目標である台湾の統一を、もし必要とあらば軍事力で達成する、という中国の主張を「単なる大風呂敷に過ぎない」と却下するのは、極めつきに愚かなことだろう。

A widely held belief is that China will not use force against Taiwan....The basis for the former proposition is the assumption that China has too much to lose economically to risk a conflict over Taiwan....Indeed, the follow up question is:“Would China under certain circumstances use military force against Taiwan no matter what the economic consequences?” The answer, according to Friedman, is“absolutely.” Many analysts, including the contributors to this volume, would concur with this judgment....Thus, it would be extremely unwise to dismiss China’s insistence that unification with Taiwan is a key national security objective to be achieved by force, if necessary, as merely hot air.

("THE COSTS OF CONFLICT" p1〜3)
 いったい、なぜでしょうか? 台湾に侵攻しても、中国は意外と経済的損失を受けないのでしょうか。それとも、大きな損失を受けるけれど、中国自身はそれに気づいていないのでしょうか。あるいは、恐るべき経済的損失を甘んじて受け入れ、それでもなお台湾を侵略すべき理由が存在するというのでしょうか?

 本書の主要部を順に見ていきましょう。

中国は台湾有事のコストをどう認識しているか?



 台湾に侵攻した場合、どのような損失を受けると中国は認識しているのでしょうか? 長年中国の安全保障問題を研究しているFinkelsteinは、本書の第2章「CHINESE PERCEPTIONS OF THE COSTS OF A CONFLICT(紛争の代価についての中国の認識)」において、こう論じています。
 
 確からしいのは、中国の指導者たちが台湾有事について、こう判断していることです。

台湾との戦争は、アメリカとの武力紛争を意味する(p13)

 中国が台湾に攻め込めば、アメリカが台湾を助けるため軍隊を送って来るだろう――と、中国は判断している。それは確実だ、とFinkelsteinは説きます。
 
  台湾、正式には中華民国は、かつてアメリカの同盟国であり、断交後の現在も事実上の同盟関係にあります。ゆえに、台湾有事の際にアメリカは実際に台湾を救援すべく軍を送って来るだろう、と中国は読んでいるわけです。中国現代国際関係研究所の主任分析官だったYan Xuetongは、こう分析しています。
 
もし台湾海峡で危機が起これば、アメリカが軍事的に関与してくることは確実だ。……関与してこない可能性は、存在しない。問題は、それがどの程度の関与かということのみである。

if a crisis breaks out in the Taiwan Strait, it is certain that the United States will become militarily involved. ...the possibility of them not getting involved does not exist; the only question is the degree of involvement.

(同書p15)
 台湾侵攻がアメリカとの戦争を自動的に引き起こすことになるとすれば、中国にとって軍事的にかなりの損失を覚悟せねばならないし、勝利はかなり困難でしょう。もし中国が勝利できるとすれば迅速に台湾を占領し、アメリカに介入を諦めさせることです。しかし、仮にそうできたとしても、国際的な孤立は免れないでしょう。

 台湾侵攻は経済的にも中国に大ダメージを与えるし、当の中国もそれをよく自覚している、といいます。戦争が長期にわたれば、沿岸の豊かな都市が攻撃を受けるし、外国からの援助や投資、貿易に大ダメージを与えるでしょう。こういった経済的な損失が甚大なことは火を見るより明らかで、もちろん中国もそれをよく認識しています。
 
 そういったコスト認識は中国が台湾侵攻を決意するハードルを上げている、とFinkelstein他の著者たちは書いています。まあ、そりゃあそうです。
 
 それにも関わらず、なぜ本書「紛争の代価(THE COSTS OF CONFLICT)」の論者たちは、中国がある条件下では間違いなく台湾に侵攻する、と分析しているのでしょう? 経済的に大きな損失を甘受し、さらにはアメリカとの戦争をも覚悟して、それでもなお、ある条件下で中国が台湾に攻め込むというのは、何を求めてのことでしょうか。

経済的に大損をしても戦争に打って出る国家は、何を求めているのか



 経済的に大損することを覚悟で戦争に打って出た国といえば、他ならぬ日本もその一つです。
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リアリズムと防衛を学ぶ

防衛ってそういうことだったのかブログ。「ちょっと興味はあるけど、よく知らない」という方向けに、分かり易くてライトな防衛ブログを目指してます。

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