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企画詳細◇セミナー/シンポジウム
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Ⅰ部 戦時性暴力/日常の性暴力
その他詳細情報
10:30~12:30 司会 秋林こずえ 宮城晴美「沖縄からの報告」 村本邦子「南京ワークショップの報告」 梁澄子「在日の慰安婦裁判を支える会」から 鄭暎惠「性暴力防止の立法化」に向けて Ⅱ部 歴史と言説―「慰安婦」問題と関連して 13:30~15:30 司会 姫岡とし子 宋連玉「「慰安婦」・公娼の境界と帝国の企み」 イ・ナヨン「日本軍「慰安婦」と米軍基地売春婦 ―植民地遺産と韓国のポストコロニアルの現在」 ヤン・ヒョナ 「日本政府に対する韓国の慰安婦生還者の法的 請求はナショナリスティックなアクションか? ―法 的責任、道徳的責任、トランスナショナリズム」 岡野八代「「慰安婦」問題と日本の民主化」 Ⅲ部 全体討論 16:00~18:00 司会 崎山政毅・池内靖子 シンポジウムの趣旨 性暴力のトラウマは、戦争・紛争下におけるものであれ、日常生活におけるものであれ、自己の拠り所を根こそぎ にされ、その恐ろしい出来事が過去とならず、くりかえし被害者に回帰してくるという性格を持っている。臨床の医者 として、多くの性暴力被害者と向かいあってきた宮地尚子さんは、次のように指摘している。 「私たちは映画やドキュメンタリー・フィルム、書物や証言集などで過去の出来事を追体験することはできる。けれ どもそこで再現可能なのはせいぜい視聴覚レベルであり、事件当時のすえたような臭いや、うだるような暑さ、しび れるような寒さ、汗や血のぬるぬるとする触覚や、気が遠くなるほどの時間の長さ、震えの止まらない指先、凍りつく ような恐怖などまで追体験することはできない。」(宮地尚子『トラウマの医療人類学』2005) 証言者の痛みと孤独の深さに思いをいたすとき、彼女たちの証言を聞くことができること自体、奇蹟的なことに思 える。 もう一つ、元「慰安婦」の証言、絵画、映画について深い思考を掘り下げてきた細見和之さんの言葉を引用して おこう。「直接的な加害者と言えないわれわれも、この証言を聞き、これらの証言者とともに同じ時代を生きている 者、そして現に生きてきた者として、確かな責任を負うことになるだろう。忘れてならないのは、どんなに雄弁な証言 者も孤独である、ということだ。聞かれないかぎり、聞き届けられないかぎり、それに耳を傾ける者がいないかぎり、そ もそも証言は『証言』でありえないからだ。その意味で、われわれは彼ら、彼女らの語りを現に『証言』として構成す る、きわめて重要なファクターなのだ。実際、たんに証言を聞かないという態度によって、その実、証言者を証言者と して抹殺するという振る舞いが、この国ではずっと横行しているではないか。」(細見和之『言葉と記憶』2005) 証言者を抹殺する暴力が横行しているこの国で、在日韓国人元「慰安婦」宋神道さんは、度重なる敗訴にあって も、「裁判負けても、オレの心は負けていない」と語った。この力強い言葉は、この息苦しい同時代に生きている私た ちすべてにとって、またとない励ましであり、贈りものと言えよう。絶望的にみえる不条理な世界にあって、しかし私た ちは「絶望しているわけにはいかない」し、このように、実際、屈しない人々がいることが希望である。宋神道さんと 「在日の慰安婦裁判を支える会」に参加した人たちはドキュメンタリー・フィルムを制作しているが、貴重な闘いの証言となっている。元「慰安婦」の方々の証言、絵画、映像を通して、私たちは彼女たちの苛酷な体験を追体験するこ とはできないが、彼女たちの証言を証言として受けとめることは私たちにしかできない。 本シンポジウムは、国際言語文化研究所のジェンダー研究会メンバーによる科研基盤Bの研究プロジェクト(代 表:秋林こずえ)の一環として企画された。この研究プロジェクトは、「バックラッシュ時代の平和構築とジェンダー」 というテーマで、ジェンダーの視点から、平和研究また平和・安全保障関連政策への正義をめぐる議論の導入を図 る。具体的には、ポスト紛争における「平和構築」とジェンダー正義の確立を目指す理論的かつ実践的研究に取り 組むものである。 立命館大学国際言語文化研究所のジェンダー研究会では、これまでも「慰安婦」問題に関連し、証言集会や映 画上映などに取り組み、研究者だけでなく、活動家、映像作家やアーティストとのネットワークを培ってきた。本シン ポジウムは、継続して新たなネットワークを構築するために、日本の植民地支配と戦争責任、戦時性暴力に関する 研究や、市民運動に関わってきた方々をパネリストに迎えて開かれる。 今年2010年は、女性市民運動による「女性国際戦犯法廷」が開かれてから、10年目を迎える。90年代初めに韓 国の金学順さんが旧日本軍「慰安婦」制度の体験者として証言して以来、「慰安婦」問題が公論化され、アジア各地 における戦時性暴力の補償を求める運動が高まり、この法廷は、その一つの集約的な形として、戦時性暴力を裁く 民衆法廷を実現した。このシンポジウムでは、戦時性暴力被害者が切り拓いた証言の地平を掘り下げて考察すると ともに、「女性国際戦犯法廷」を単にふり返ることにとどまるのではなく、その後のバックラッシュの時代における日本 社会を見据え、その変革を促すための平和政策、女性政策の実現に向けて議論を深めたい。
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