|
向精神薬依存に警鐘 仙台で自死予防の支援者向け講習会
自殺の不安や心の病気に悩む人に、どう答えたらいい? そんな問いを抱え、自死予防に関わる人の講習会が先日、仙台市で開かれた。知られていない向精神薬の知識、薬に頼らない選択としてのカウンセリングの実際を「常識として知って」と専門家が助言した。
<多様な副作用指摘> 同市の自死遺族グループ・藍(あい)の会が主催。全国自死遺族連絡会による遺族千人の調査で自殺者の7割が精神科を受診中だったとの実情が分かり、「薬とメンタルケアを学ぼう」と宮城県の自殺対策緊急補助事業で企画した。 市民の人権擁護の会日本支部(東京)の小倉謙さん(42)が米国や日本での調査を基に講演、「向精神薬服用に十分な注意を」と語った。 種類により200万人以上の服用者がいる抗うつ剤には、90種もの副作用が記載されたものもあると指摘。自殺を念じ企図するような恐れも含まれ、「医師が時間をかけて説明しているのかどうか」と問題点を挙げた。 公表された副作用発現率が80〜90%台の向精神薬もあり、中には「子ども向けに使われている例もある。親にも知識を身につけてほしい」と小倉さん。何種類も重複して40錠余りも処方された人もいると紹介し、「これでは治療や自殺予防にならないのではないか」と警鐘を鳴らした。
<受け止める存在に> 日本産業カウンセラー協会東北支部の神春美さん(63)は働く人のメンタルヘルスについて講演。「部下の病気・自殺予防の話を管理職に話しても、50代の『頑張ってきた』世代には通じにくい。意識改革が急務」と話した。 面接相談で自殺の前兆を感じた人もおり、「奥さんに話し、一緒に温泉に行こうと誘って」と助言するなど、思い詰めた状態を和らげることで危機を避けられたという。 「仕事も手につかず、死のうかと思う」と相談された単身赴任の会社員とその後、出勤のバス停で再会。「もっと話をしよう」と公園に誘って2時間話をし、それを機に地元に戻れた例もある。 「悩みを聴く側も『癒やしたい、治したい』という自己満足でなく、一緒にいて受け止める存在であることが大切」と語った。 講習会には同県や仙台市、仙台いのちの電話の担当者や社会福祉士、関心のある市民ら40人が参加。「日本で薬の認可はどんな現状か」「子どもが精神障害で薬代の負担が重い」など質問が相次いだ。
2010年12月18日土曜日
|