きょうのコラム「時鐘」 2010年12月20日

 昭和30年代のはじめ、小学校の担任が「東京の学校は校庭がコンクリートや」と話したのを覚えている。都会はいいだろう、と言うわけだ

今ならお笑いぐさだが、当時小学生の体力や運動能力の都市と地方の差は、それほど問題視されなかった。コンクリートの校庭は都会の象徴のように見えたのだった。それから半世紀、体力の地域間格差は広がり続けた

大阪府の学校で、校庭の芝生が野球練習にじゃまになると選手の親がはがし、補助金を出した府知事が怒っていた。芝生のグラウンドは確かにいい。が、どの子にとっても歓迎されるものでないことを、この出来事は示している

先の小中学生体力テストで福井や秋田が1、2位を占めた。石川、富山も上位の常連で、最下位は大阪や東京など順位の固定化が明確になっている。そのうえ福井、秋田が上位で、大阪が悪いのは、学力テストの結果とも重なる

体力と学力の二つのテストを重ねると見えてくるものがある。教育は環境も大事だが、大人の熱意次第であり、一律ではなく多彩な個性を見て育てる大切さだ。行政と教師の本気度が問われている。