社会
悲しみケア、絆で 池田小事件遺族がNPO設立
コンサートの打ち合わせをする本郷さん(右)と安永さん=伊丹市西台4 |
2001年6月、児童8人の命が奪われた大阪教育大付属池田小事件で、長女の優希ちゃん=当時(7つ)=を失った本郷由美子さん(44)=大阪府池田市=が今月、傾聴ボランティアや朗読会を通じ、悲しみを背負った人に寄り添うNPO法人を伊丹市に立ち上げた。事件を防げなかった自責の念は今も消えない。それでも、懸命に生きる姿を天国の娘に報告することが、心の支えになっている。
活動をともにするのは、05年10月に、乗馬中の事故で1人娘の由理子さん=当時(13)=を亡くした安永郁子さん(53)=伊丹市。法人名「スノーエンジェル」は、優希ちゃんの名前をもじった「ゆき」と、2人の子どもの頭文字「Y」を「羽根」になぞらえた。
本郷さんは事件後、悲嘆に暮れ、社会に背を向けた。ショックでふさぎ込む本郷さんを黙って支えたのが事件で同じように子どもを亡くした母親仲間や近所の友人ら。つらい現実と向き合うきっかけになった。
感謝を行動で表したくて、1年勉強し、05年に「精神対話士」の民間資格を取った。加害者の裁判を傍聴するうち、暗い気持ちを抱えた人が犯罪者になるような社会に、無関心だった自分にも罪悪感を抱いたからだ。
その初めての派遣先として、出会ったのが安永さんだった。依頼された対話士の条件は「同年代で、子どもを亡くした人」。本郷さんは被害者遺族としての身の上は伏せ、娘の事故後、一歩も外出できなくなった安永さんの家に通い詰めた。
心を固く閉じた上、「生きたくない」と繰り返す安永さんに対し、「あなたを待っててくれる人がいる」と優しいまなざしを向けた。本郷さんがもたらす「安心感」が救いになった。1回80分の対話は4年間、159回続いた。安永さんに笑顔が戻り始めた昨年末、自分が池田小事件の遺族であると打ち明けた。
ケアを卒業した今年4月、大学で音楽を専攻していた安永さんは、周囲への感謝の気持ちを込めてコンサートを開いた。これを機に「同じ苦しみを抱える人を支えたい」と思うようになり、本郷さんと意気投合。NPO法人設立につながった。
当面は音楽や朗読によるコンサートが中心だが、今後はボランティアを募り、活動を広げる方針だ。「人と人とのきずなが、安全で安心な社会につながる」。本郷さんはそう信じている。
21日には、伊丹アイフォニックホールでクリスマスコンサートを開く。入場料千円。スノーエンジェルTEL072・773・0801
(飯田 憲)
(2010/12/20 06:30)
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