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ニュースの核心:独居高齢者の安否確認システム 電話で予兆も把握 /岩手

 ◇利用数伸びず、目標の3分の1

 増加傾向にある独居高齢者の孤独死への手だてがなかなか見つからない中、一般電話を使って安否確認できる県独自のシステムが広がりつつある。県内のほぼ全域で使われる緊急通報システムと違い、高齢者自らが自分の状況を毎日電話連絡するので、運用する社会福祉協議会も緊急対応だけでなく予兆も把握できる。民生委員らの負担も軽減できる。しかし、開始1年半で利用数が頭打ちになるなど課題もある。【狩野智彦】

 県社協などによると、65歳以上の独居高齢者世帯(07年)は約3万6000で一般世帯の7・6%。そのうち、死亡確認が死後2日以上だったのは90人で、03年と比べ38人増えた。

 32市町村では、高齢者が異常時に通報する民間や行政独自の緊急通報システムが導入されている。だが、多くが端末のボタンを押して緊急を告げるだけのため、健康状態を把握できなかった。また、県社協によると、5割超の利用者が異常時に通報できない不安を感じ、4割弱が人に迷惑を掛けると、通報にためらいや遠慮感を抱くという。

 こうした状況を脱し孤独死を予防しようと、09年度から県立大と県社協が共同開発した一般電話を使った「いわて“おげんき”みまもりシステム」の運用が始まった。高齢者は自宅から1日1回、県立大にあるサーバーに電話し、音声案内に従い(1)元気(2)少し元気(3)具合が悪い(4)話したい--のどれかの番号を押す。(4)の場合、高齢者は社協の担当者と通話できる。

 情報はサーバーに記録され、社協は状況に応じて民生委員や隣人など登録された協力者に連絡、サポートを依頼する。協力者は状況を利用者同様に電話で情報を入れる。登録や基本利用料は無料だが、月に300円ほど通信料がかかる。

 成果は出始めている。陸前高田市で11月、70歳代の利用者が入浴中に急死した。市社協は定時連絡がないことに気づき、翌朝すぐに死亡が確認されたという。利用者からも「自分で発信すると、近所に迷惑かけずに済む」(高齢者)「担当地域が広いので助かる」(民生委員)など評価の声が上がる。

 だが、課題は少なくない。利用者は19市町村約240人、協力者約300人と、09年度末の目標数の3分の1に満たない。県社協の根田秋雄・地域福祉企画課長は「利用者、協力者とも有料だ。特に少ない所得で生活する高齢者に無理強いはできない」とこぼす。

 夜間や休日の通話対応にもばらつきがある。ほぼ半数の社協では、担当者が持つ携帯電話に着信を転送するなどの対策を講じているが、電波の届かない山間部もある。

 青森県は、89年から有人の電話受信センターを24時間態勢で設けている。全国的にもまれで、同県社協の工藤慶広・地域福祉課長は「高齢者は夜に具合が悪くなることを最も心配する。近所に声をかけづらく、24時間なら安心だとの要望に応えた」と理由を明かす。

 県立大の小川晃子教授(福祉情報学)は「数百円で支援や負担減につながるなら安い、と価値観を転換し、意義を理解できる広報や研修を多く実施すべきだ。システムからいかに生活支援につなげるかを考える必要がある」と指摘する。

毎日新聞 2010年12月19日 地方版

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