政治

文字サイズ変更

子ども手当:財源で迷走再び 控除見直しに民主抵抗、相続増税が浮上

 <分析>

 11年度予算編成の焦点となっている子ども手当上積みを巡り、配偶者控除の見直しなどで財源を確保する政府の案が撤回に追い込まれる可能性が出てきた。来春の統一地方選を前に、子どものいない主婦層などの反発を懸念する民主党の反対意見が強まっているためだ。官邸の求心力の衰えも相まって、党の掲げた「控除から手当へ」との理念を置き去りにした議論が進んでいる。【平地修、坂井隆之】

 「(党内の論議で)すべての議員に発言してもらったが、(高所得者向けの配偶者控除)廃止論はほとんどなかった。もう1年議論してもいいのではないか」。民主党税制改正プロジェクトチーム(PT)の中野寛成座長は7日の政府税制調査会で、同控除見直しに慎重な考え方を示した。

 子ども手当上積み財源について関係5閣僚会合は、配偶者控除の見直しか、給付に所得制限を設けるかの2案を軸に検討していた。だが、給付制限には「子どもを社会全体で育てるとの理念と違っている」(細川律夫厚生労働相)との反対論が強く、財務・厚労両省は同控除を一部廃止する方向で最終調整に入っていた。

 この動きに党が待ったをかける。党PTが6日、政府に提出した提言は配偶者控除見直しについて「慎重な判断」を要請。来春の統一地方選をにらみ「控除を縮小すれば、有権者の反発は避けられない」との声が党内で強まっているためだ。党政調会長を兼ねる玄葉光一郎国家戦略担当相も7日の会見で「配偶者控除のみならず幅広く議論する」と述べ、同控除以外で財源を探す意向を示した。

 玄葉氏は、給与所得控除の見直しや、相続税増税で財源を確保する考えとみられる。だが、これらの増収措置をほかの歳出や減税の財源に回そうとしていた財務省は強く反発。省内では一時、月7000円(3歳未満のみ)の上積み額を圧縮する案まで浮上した。

 野田佳彦財務相は同日の会見で「7000円を目安とすることを関係閣僚で確認した」と圧縮を否定する一方、「配偶者控除の代替財源はない」とも述べ、同控除見直しがなければ、上積みは困難との考えをちらつかせた。細川厚労相も「(同控除を見直す)方向で進むのは当然」と強調。政府・与党の綱引きは混迷の度合いを深めている。

 ◇公約の理念、置き去りに

 子ども手当の財源について民主党は、昨年夏の衆院選マニフェスト(政権公約)で、「配偶者控除と扶養控除の廃止」で賄うと明記。高所得者に有利な控除制度を廃止し、手当支給ですべての家計を支援する「控除から手当へ」の理念に基づいた公約だった。

 ところが、財源探しは難航し、政府は、11年度からの子ども手当満額(現行の倍の月2万6000円)支給断念に追い込まれた。問題は、手当導入前から月1万円の児童手当を受け取っていた3歳未満の世帯。児童手当が廃止された上、来年1月からは所得税などの扶養控除も廃止されるため、年収800万円以下の世帯で最大月6000円の負担増になってしまう。3歳未満の世帯のみ月7000円増額する案は、乏しい財源の中、負担増世帯を出さないための苦肉の策だった。

 ただ、内閣支持率の急落で、求心力低下の目立っている菅政権にとって、この苦肉の策をまとめることも容易ではない。「『官邸主導で収拾する』という気迫が伝わってこない」(民主党議員)ことも、配偶者控除見直しを巡る混乱に拍車をかけている。

毎日新聞 2010年12月8日 東京朝刊

PR情報

政治 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド