社説
菅政権半年/「脱小沢」だけでは持たない
外交でつまずき、内政でも次々と後退を迫られる。菅直人首相が置かれている境遇は、八方ふさがりだ。 菅政権が発足して半年を迎えた。期待が失望に変わるのに、あまりに短い月日だったと言わざるを得ない。 政策課題への取り組みを本格化させようにも、ねじれ国会が立ちはだかった。1月召集の通常国会も波乱含みの展開となろう。民主党内では内閣改造論がくすぶる。 最高権力者として調整の難しさにもがき苦しんでいるのは理解できるが、覇気が伝わってこない。迷ったら原点に、だ。かつて野党の議員、党首として見せた果敢な行動力と発言の切れ味を取り戻してほしい。 菅内閣の支持率はこの間、乱高下した。共同通信社の世論調査によると、発足直後は61.5%。参院選で大敗したものの、9月の改造内閣発足直後には64.4%に戻した。 党人事や組閣で、小沢一郎元代表と距離のある議員を多く起用したことが好感されてのことだった。政治資金問題を抱える小沢氏への国民の反発は根強く、いわば「対抗軸」としての菅氏に期待が集まった。 ところが、野党や国民が求める小沢氏の国会招致はいまだ実現していない。岡田克也幹事長に調整を委ねるだけで、首相自らが事態打開に向けて動こうとしないのは理解に苦しむ。 「自分の党の議員が疑惑を持たれているのであれば、党首として何らかの措置をとるべきだろう」。首相はかつて自著『大臣』にそう記した。今こそ自説を実行に移す時ではないのか。 もっとも現在の危機は「脱小沢」路線以外、浮揚のすべを見いだせない政権のひ弱さに起因しているとも言える。小沢氏という「敵役」が表舞台から降りると、途端にボロが目立ち始める。その繰り返しだ。 例えば、子ども手当の上積み財源は確保されていない。米軍普天間飛行場の移設問題で、沖縄と米国双方の納得を得られる妙案は浮かんでいない。地域主権改革も掛け声だけで、地方の不信は頂点に達している。 直近の内閣支持率は23.6%まで落ち込んだ。「危険水域」とされる30%を割り込み、本来であれば倒閣運動が起きても不思議ではない不人気ぶりだ。 ところが、表向き首相の座は安泰だ。党内に後継者が見当たらないこと、自民党が復調し切っていないこと、政権のたらい回しに対する国民の嫌悪感。そんな奇妙なバランスの上で、かろうじて命脈を保っている。 「選挙によって、ある人物なりある党に委ねた以上、その任期いっぱいは任せるべきだ」。首相は『大臣』で、民主主義を「交代可能な独裁」と呼んだ。 「独裁」という激語を使ってまで表現したかったこと、それは強いリーダーシップだろう。だが、現実に起きていることは物事が決まらず、決められずに漂流する政治の姿だ。 首相は6日の記者会見で「これからは率直に意見を言いたい」と述べた。「変身」のために残された時間は少ない。
2010年12月08日水曜日
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