菅直人政権が発足して、きょうで半年を迎えた。発足直後に6割を超えていた内閣支持率は、直近の世論調査で2割台まで落ち込んだ。疑いようもなく、この政権は「危険水域」に突入している。
6カ月間で、内閣支持率と不支持率の数字は正反対にひっくり返った。これほど鮮明に国民の「期待」が「失望」に反転した政権も珍しい。
政権に対する実績評価が低いだけにとどまらない。より深刻なのは、その難局を打ち破る気概や反転攻勢の道筋が国民に一向に伝わってこないことだ。
危機感が足りないのではないか。そう国民に受け取られても仕方があるまい。
臨時国会閉幕を受けて開いた記者会見で首相は、5兆円規模の補正予算成立や横浜市で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)などを挙げ、「雇用と経済成長に向かって歩みを進めた」「これまでの政権ができなかったことを次々にやっている」と自画自賛した。
忙しくて「それを伝える暇がなかった」のが「私の実感」だとも述べた。果たしてそうなのか。
政権の目標を掲げても、抵抗や反発に遭うと、あっさり引っ込めたり、中途半端なまま置き去りにしたりする。方針転換の説明は不十分で、批判されると「ぶれていない」と開き直る。そんな悪循環を私たちは何度も見せつけられた。
参院選で首相が提起した消費税率の引き上げ問題や、所信表明で「参加を検討」と公言しながら尻すぼみになってしまった環太平洋連携協定(TPP)への対応は、その典型だろう。
「クリーンな政治」こそ「私の原点」と言いながら、小沢一郎民主党元代表の国会招致は実現できず、党の企業・団体献金の受領再開も容認してしまった。財源不足の壁に阻まれて、政権公約の後退も半ば常態化しつつある。
「熟議」を唱えた臨時国会では2閣僚が参院の問責決議を突きつけられた。「ねじれ国会」を乗り切るのは並大抵のことではないと、永田町では人心一新の内閣改造や、参院で否決されても衆院で再可決できる3分の2勢力を確保するための社民党の連立復帰、果ては自民党との大連立構想まで取りざたされ始めた。
しかし、ここは厳しい現実を逃れるための奇策や特効薬を安易に探し求めている場合ではあるまい。
むしろ、危機的な状況だからこそ国民本位の政策とは何かを突き詰めて考え、その優先順位にめりはりを付け、政権のエネルギーを集中させるべきだ。首相がその先頭に立って、リーダーシップを発揮すべきことは論をまたない。
首相が何をやりたいのか分からない。政権の旗印が判然としない。そんな不満や不安が民意の底流に渦巻いている。
なすすべもなく、このままずるずると後ずさりしてしまうのか。それとも政策実現で政権浮揚の突破口を開くか。半年が過ぎた菅政権は剣が峰に立っている。
=2010/12/08付 西日本新聞朝刊=