政府・与党社会保障改革検討本部(本部長・菅直人首相)は10日、税と社会保障の一体改革に向けた基本方針を決めた。社会保障の財源確保と財政健全化のため、消費税増税を念頭に、11年半ばまでに税制改革案をまとめると明記。菅首相は「一つの党の力では困難だ」と述べ、野党に議論に参加するよう呼びかけた。政府は近く基本方針を閣議決定する方針で、参院選後、封印されていた消費増税論議が実質的にスタートする。
基本方針は、社会保障改革と安定財源の確保のための税制改革について「11年半ばまでに成案を得、国民的な合意を得たうえで実現を図る」と、初めて時期を明記した。「消費税」という文言はないが、改革本部の下に設置された有識者会議や民主党の関係調査会が消費税増税を求めたことを「尊重」すると指摘。財政健全化に向け、具体的な工程表を示すことも盛り込んだ。
改革実現に当たっては「国民の理解と協力が必要」と、超党派による常設の会議を設ける方針を提案。菅首相は検討本部のあいさつで、税制改革について「幾多の政権で越えられなかった。何としても越えていく」と述べ、消費税増税に向けた環境整備に取り組む決意を示した。
有識者会議や党調査会は「子育てや雇用など現役世代の支援に力を入れるべきだ」と指摘しており、基本方針では来年度も子ども手当を支給するための法案や、求職者支援法案の早期提出を目指すとしている。社会保障と税の共通番号制度については来年1月をメドに基本方針をまとめ、11年秋以降に関連法案を国会に提出する方針を示している。
これに関連し、仙谷由人官房長官は10日のBS朝日の番組収録で、国債発行額が税収見通しを上回る事態について「何年続けられるか、普通の頭で考えれば分かる。来年度予算までで精いっぱいだ」と述べ、消費税増税の議論を急ぐ考えを示した。野党との協議については「財政規律の一点で、どういう連携が組めるかが最大の問題だ」と述べた。
政府は今後、野党側の協力も得ながら、具体的な制度論や必要となる増税幅などの試算を行う方針。ただ、菅内閣の支持率低下を受け、野党は政権との対決姿勢を強めており、与野党協議の場が実現するかは不透明だ。
改革本部は菅首相のほか、仙谷長官や野田佳彦財務相、細川律夫厚生労働相ら8閣僚と、民主党の岡田克也幹事長、藤井裕久調査会長、国民新党の下地幹郎幹事長ら与党幹部で構成している。【山田夢留】
毎日新聞 2010年12月11日 東京朝刊