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これ以上、国会での説明から逃げ続けることが許されるだろうか。民主党の小沢一郎元代表は今度こそ衆院政治倫理審査会への出席を決断すべきだ。民主党はきのうの役員会で、岡田克也[記事全文]
政府の公的統計を内外に広く公開することで、新たな活用の道を開くことができないだろうか。社会保障や公共事業などの政策をつくる際、判断材料とするために政府はさまざまな公的統[記事全文]
これ以上、国会での説明から逃げ続けることが許されるだろうか。民主党の小沢一郎元代表は今度こそ衆院政治倫理審査会への出席を決断すべきだ。
民主党はきのうの役員会で、岡田克也幹事長が改めて小沢氏に自発的な政倫審出席を求めることを決めた。小沢氏があくまで応じないなら、政倫審での議決も辞さない方針だ。
小沢氏は裁判で事実関係を明らかにするので、国会での説明は必要ないとの立場を崩していない。岡田氏は早急に小沢氏を説得し、不調に終われば、議決による国会招致の実現をためらうべきではない。
小沢氏の政治資金をめぐる一連の問題は、民主党にとって、政権交代前から続く宿痾(しゅくあ)といっていい。
それは、鳩山由紀夫、菅直人の2代にわたる首相の政権運営の足かせになったというばかりではない。
自民党時代と変わらぬ「政治とカネ」の問題に、一向にけじめをつけられない民主党。その姿が、政権交代への、ひいては日本の政党政治そのものへの国民の深い幻滅を招いた。
朝日新聞の最新の世論調査では、なお7割近くが小沢氏に国会での説明を求めている。
野党各党は偽証罪に問われうる証人喚問を求めており、政倫審は最低限のけじめに過ぎない。しかし、それすら実現できないようなら、年明けの通常国会はまた与野党の不毛な対立の繰り返しとなるだろう。通常国会が始まる前に、この問題に一定の区切りをつけておくことは必須の作業である。
小沢氏は最近も「政権交代の試みを何としても成功させたい」と語っている。それが本心なら、その成功を邪魔しているのは説明責任を果たそうとしない小沢氏自身の姿勢であることに、なぜ思いを致さないのだろうか。
菅内閣の支持率は続落し、来春の統一地方選の行方を占うとして注目された茨城県議選も、極めて厳しい結果に終わった。
政権の窮状は、もちろん小沢氏の問題だけが原因ではない。この間の外交失態や閣僚の失言について、最高指導者である菅首相は自らの責任の重さを厳しく受け止めなければいけない。
国民のための政策をきちんと立案し、実行する。そのための指導力の発揮と態勢の立て直しにこそ、菅首相は全力をあげねばならない。小沢氏の問題への対処は、その前提となる。
民主党には、税制改正や来年度予算編成が山場を迎えているこの時期に、内紛を重ねている余裕はない。
「小沢か、脱小沢か」の対立から、いい加減に卒業しなければならない。
民主党のすべての国会議員は、政治そのものへの有権者の信頼が失われつつあるという強い危機感を共有して、ことに臨むべきである。
政府の公的統計を内外に広く公開することで、新たな活用の道を開くことができないだろうか。
社会保障や公共事業などの政策をつくる際、判断材料とするために政府はさまざまな公的統計を定期的に集めている。多くは現状を把握するためのデータで、政府も利用の拡大に取り組んではいる。
従来は行政担当者だけが使う想定のもとに、さまざまな利用制限が設けられていたが、2009年4月施行の法改正で、社会全体が活用できる共有財産と位置づけられた。
背景には、「個票」と呼ばれる統計の個別データを学術研究や経済活動に二次的に利用できるようにして、その成果を政策に反映させようとする世界的な動向がある。
政策に一貫性を持たせたり、政策の変更を国民に納得してもらったりするためには、統計に基づく実証的根拠が以前にも増して大切だ。
だが、政府だけでは限界がある。統計データを公開し、多くの研究者や専門家に、官僚では思いつかない視点から分析・検証してもらうことが重要になってきた。変化が早まり、社会が複雑化する中では、政策の場をオープンにしたほうが質も効率も高められる、との判断がそこにはある。
だが、施行から1年半たった今も、二次利用はあまり進んでいない。窓口の独立行政法人統計センターによると昨年度の利用件数は27、今年度は12月13日時点で42にとどまる。
学者や研究者の間から問題点としてあがっているのは、二次利用が可能な形で提供されている統計数の少なさだ。そうした統計は国勢調査や全国消費実態調査、就業構造基本調査など、まだ20に満たない。
今年度中にもう少し増える見込みだが、公的統計のうち特に公共性が高いとされる基幹統計だけでも50余りあることを考えれば、公開のペースは遅い。個人情報保護の観点からデータを加工処理する作業などに時間がかかるとはいえ、政府全体で取り組もうという姿勢は見えない。
日本の公的統計は縦割り行政の弊害が大きく、同じ省内でも個々の統計の関連づけといった体系的な整備がなされていないものが少なくない。データの取り方や設問が異なり、複数の統計を組み合わせる高度な分析が困難な例も目立つ。今後は利用にも配慮した統計の総合管理が必要だ。
所得格差の拡大や少子高齢化といった問題を抱えている日本が、積極的な統計整備を進めれば、課題解決に向けて世界の英知を集めることも夢ではないだろう。官僚に頼らない政治主導の政策づくりにも生かせる。
さまざまな効用を視野に、「統計大国」への道を歩みたい。