イーゴリ・シュワロフ第一副首相の南クリール(北方領土)訪問に関連して、日本側からは、これを「遺憾」とする声明や「受け入れがたい」とする断固たるシグナルが出された。又「ロシア要人による南クリール訪問は、極東開発にとってプラスにならない」との指摘もなされた。
一方、菅政権は有権者の側から、きわめてこちらも断固たるシグナルが示された。今週初め支持率が、内閣発足以来最低を記録したのである。
ロシアは、これまで同様、政治と経済を結びつけたり、領土問題をロ日関係の中心にすえるのは、全く建設的ではないとの立場を貫いている。経済的刺激や経済的関心及び利益が一致した時、関係は、領土問題が完全に解決しているかどうかにかかわりなく、発展してゆくものではないだろうか。この事は、日本でもロシアでもビジネス関係者達は非常によく理解している。地域レベルでの共同プロジェクトの発展は、日本の企業にロシア市場に進出する大きなチャンスを与えるし、ロシア側にとっては、自分たちが抱える重要な経済的課題を解決する助けとなるだろう。現在、ロ日双方のビジネス界の関心は、これまでになく高まっており、この事は具体的な契約や合意という形で現れている。
ロ日関係の専門家ヴィクトル・パヴリャテンコ氏の意見をご紹介しよう―
「数々のシグナルや遺憾の言葉にもかかわらず、一週間前、日本側は巨大共同プロジェクトの一つに署名している。日本がロシア国内に木材加工コンビナートを建設するというものだ。そこでは日本向けに、高品質の原料を用いた化粧板が製造される。フル稼働すれば、ロシアはそこで今後、材料でなく製品を生産して輸出する事ができるだろう。これは一つの例に過ぎないが、こうした例は他にもかなりたくさんある。このように言葉の上と、実際の事柄とは違っている。日本のビジネス界は、ロシアの状況をよりきちんとはっきり分析しており、ロシア側とコンタクトを続け、自分達の利益を追求している。」
日本のビジネス界は「政経分離」の原則がすでに過去のものであり、その正しさを証明できなかった事を覚えている。その後、この「政経分離」は「拡大均衡」の原則に取って代わった。これは、ロシア側から領土問題で譲歩を引き出すたびに、それに報いる形で経済面でロ日関係を発展させてゆこうというものだ。
一方ロシアは、当然、領土問題が存在していることは否定しないものの、そうであっても、相互に関心があり互恵的な他の分野を含めた全面的な関係を発展させるべきであり、その方が正しいと考えている。たとえば日中関係にも、領土問題が存在するが、多面的な交流は活発に行われている。とりわけ経済面では、中国は日本の主要な貿易相手国であり、日本は中国にとって主要な投資国だ。韓国との関係でも、同様だ。領土問題が、経済協力に影響を与えることはない。
ここで再びパヴリャテンコ氏の見解をご紹介する―
「1970年代、日本は中国に進出し、これは両国にとって経済的にプラスに働いた。現在日中協力は、堅固な土台を持ち、経済上の利益は領土問題があってさえ、誰かがそれをふち壊す事などできないように思われるほど、非常に密接に絡み合っている。」
ここ数年アジア太平洋地域は、経済成長の道に沿って進んでおり、この事は、地域における統合の機運を高めている。日本もそうした傾向を、決して無視できないのではないだろうか。
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