望 〜都の空から
東京の魅力や四季の彩り、さらに課題も空撮で紹介します
トップ > 政治 > 今日の読み物(スコープなど)一覧 > 記事
【今日の読み物(スコープなど)】<スコープ>首相『原点』は死守 諫早開門 指導力アピール2010年12月16日 紙面から 国営諫早湾干拓事業(長崎県)排水門の常時開門を命じた福岡高裁判決に対し、上告を断念する方針を表明した菅直人首相。政府内では上告も検討されていたが、最終的に、野党時代から同事業を「無駄な公共事業の象徴」と批判してきた自らの「原点」にこだわった。内閣支持率の低迷が続く中、政権浮揚へ指導力をアピールする狙いもある。 (城島建治) 十五日午前、首相官邸を訪れ、上告を勧める鹿野道彦農相に対し、首相は強い調子で反論。「激論」(官邸筋)の末、押し切った首相は、すぐさま記者団の前に姿を現し、上告断念を表明した。「現地に何度も足を運んで、私なりの知見を持っている」との言葉には、この問題を一番知っているのは自分だという自負がにじんだ。 高裁判決を受け、農水省は開門調査には応じるものの、判決が示した「五年間の常時開門」に従えば、干拓地の農業が大きな影響を受ける恐れがあるとして上告を求めていた。 だが、首相としては野党時代に国会論戦でこの問題を取り上げ、開門を求めてきた経緯がある。「こだわりのある問題で自分らしさを出したい気持ち」(民主党若手)を終始漏らしていたという。 政府はこれまで、子ども手当の支給額や米軍普天間飛行場移設問題への対応などで、野党時代の主張からの“変節”を批判されてきた。今回上告すれば「肝いりの諫早湾問題も同じかと思われ、国民の信頼を完全に失う」(同)ことになりかねず、こうした事態は何としても避けたかった思いも見え隠れする。 一方で、首相サイドには、今回の「政治主導」による決断を支持率回復の起爆剤にしたい計算もある。 首相はこれ以外にも、5%の法人税減税や、厚労省が減額を打ち出した二〇一一年度の年金支給額の据え置きなどの指示を連発。世論調査で「指導力がない」との烙印(らくいん)を押されてきただけに、ここにきて「決断する首相」のアピールに必死になっている格好だが、かえって追い詰められた政権の現状を印象付けたともいえる。 また、政府は常時開門に伴う防災対策や農業への影響などをめぐって、地元自治体や国会議員への説得という新たな難題と向き合うことになる。調整が行き詰まるようなことになれば、首相の決断の是非が政治問題化する可能性もある。 長崎が地元の西岡武夫参院議長は記者会見で「完成している公共事業に対して、政府がこういう判断をしたことは奇異に感じる。首相は結果にどう責任を取る覚悟があるのか、厳しく見守りたい」と語った。
おすすめサイトads by adingo
|