「影の宰相」ともてはやされる仙谷由人官房長官が、ボロボロになってきた。15日の記者会見で菅直人首相が決断力を発揮した具体例を問われ、答えられなかったのだ。そもそもそんな例が存在しないから困ってしまったのか、それともお疲れなのか。支持率が低迷するなか、アピールに躍起なのは分かるが…。
仙谷氏はこの日午後の記者会見で国営諫早湾干拓業(長崎県)をめぐる菅首相の「最終判断」について質問され「従来割と…」と言いかけて、すぐに「相当、首相に最終的な判断を仰いだ例はあった」と言い直した。
「従来−」には「首相は決断できなかった」と続くかは想像するしかないが、首相が政治主導で判断していると強くアピールする狙いがあったようだ。
しかし、干拓事業と法人税率下げ以外の具体例を聞かれると、「突如そういう質問を受けても…」と返答に窮し、「明日までに思い出しておく」と逃れてアピールは逆効果に終わってしまったのだ。13日の「甘受」発言に続くボーンヘッドだ。
仙谷氏をめぐっては、臨時国会で問責決議されたことから、辞任圧力が日に日に強まっている。西岡武夫参院議長は15日の記者会見で、自発的辞任を否定し続けている仙谷氏について「問責決議をなんと心得ておられるのか」と批判。「仙谷官房長官の傲岸不遜な発言、失策の数々には与野党を問わず批判が集中している。一刻も早く、官房長官が職を辞すことが、菅内閣による日本の国益への損失を少しでも抑えることにつながる」とする問責決議の提出理由を読み上げた。
また、民主党幹部も同日、「仙谷官房長官を辞めさせないと、2011年度予算案と引き換えに、3月に解散か総辞職だ」と言い放った。
それだけに、もはや仙谷氏には頼れないと考えているのか、ここに来て菅首相は自ら政権をアピールすることに躍起になり始めた。しかし、自分にとって都合のいいことしか言わないジコチューぶりだけが目立つだけに、効果は限定的だ。
15日午前には諫早干拓訴訟の上告断念を表明するため急きょ、記者団を集めてコメントを読み上げたが、記者団の質問は受けずじまい。
13日に法人税減税を担当閣僚に指示した際も、突然囲み取材を設定し、自分の言いたいことだけを言って、「財源は」という質問には答えなかった。